沖縄県知事選、創価学会員のホンネ
渡瀬夏彦|2018年9月29日2:24PM
池田大作先生の教えとは
今回の知事選でも、この構図がそっくりそのまま当てはまる。
佐喜眞候補は、名護市長選の渡具知候補と同じように辺野古の「へ」の字も言わず、態度を曖昧にする作戦に出た。佐喜眞氏は17年の衆議院予算委員会の地方公聴会で「日米政府が辺野古唯一としている。それを否定できない」と明言している、新基地建設容認派であるにもかかわらず、選挙ではひたすら、その本性を隠そうとしているわけだ。
新基地建設ゴリ押しの安倍政権が丸抱えする候補なのに、沖縄県民の誇りと尊厳に関わる重要なテーマ「辺野古新基地の是非」について、とことんはぐらかし続ける。この作戦で、名護市長選のみならず、知事選まで乗り切れると思っているなら、これほど県民を愚弄した態度もない。
創価学会員の中から、公明党に対して、あるいはそれを支える創価学会幹部の方針に対して、強い抗議の声があがるのは、じつに自然なことである。
野原善正さんが、公明党の姿勢に大きな疑問を持ったのは、14年7月1日「集団的自衛権行使」容認の閣議決定の頃からである。奇しくもその日は、防衛省沖縄防衛局が、辺野古新基地建設本体工事着工を宣言した日でもあった。
「自民党の暴走をブレーキ踏んで止めるべき公明党が、アクセルを踏んでしまっている」
そう感じ、いたたまれなくなったという。
9月15日、一堂に会して取材に応じてくれたのは4人の創価学会員だが、公明党の「辺野古新基地容認候補」を推薦する方針が間違いだという点で、認識は一致している。玉城デニー氏への支持を真っ先に表明した野原さんの考え方に、他の3人も完全に同意していたので、最後に野原さんの発言を要約してお伝えしたい。
「池田大作先生は、沖縄の本土復帰に際して、その著書の中でもこうおっしゃっています。沖縄戦で本土決戦の『捨て石』にした沖縄の人たちに、核や基地を押し付けての『復帰』を実現させたって駄目だ、県民への新たな裏切りだ、それでは本当の平和の実現にはならない、と。
平和は、軍事力でなく、対話を重視した外交努力で築いていくべきだ、と。その池田先生が創った公明党がいま、池田先生の教えに背いているわけです」
平和の党のはずだった公明党が、集団的自衛権行使容認の閣議決定を支持し、特定秘密保護法、戦争法制と揶揄される安保法制の成立にまで加担してしまった。そして、耐用年数200年とも言われるような辺野古新基地建設にまで同意してしまっている。良心と創価学会幹部からの号令の狭間で、公明党に対する疑問を感じ苦しんでいる学会員も多い、というのが野原さんたちの実感なのだ。
「今回の知事選挙では、明らかな辺野古新基地容認・推進派の佐喜眞淳さんの推薦を決め、支持母体の創価学会員も今までなかったほど大量に動員されています。これはどう考えても、おかしい。せめて4年前と同じように自主投票にすべきでした。自主投票なら、おそらくわたしも納得しましたよ。ここまではっきりとしたアクションは起こさなかったと思います」
県民はもちろん、全国の人びとがどう関与したのか、一人ひとりの良心良識が問われる、重大な沖縄県知事選挙である。
(わたせ なつひこ・ノンフィクションライター、2018年9月28日号)