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神戸製鋼の火力発電も「安倍案件」? 
住民は健康被害懸念で訴訟

たどころあきはる|2018年10月11日10:15AM

9月14日午後、提訴のため神戸地裁に向かう原告ら。(撮影/たどころあきはる)

神戸製鋼所(神鋼、山口貢社長)が兵庫県神戸市灘区の高炉跡地に増設予定の石炭火力発電所が、周辺住民らの猛反発を招き、公害調停を経て9月14日、法廷闘争に持ち込まれた。

被告は神鋼と新設発電所の運営子会社(コベルコパワー神戸第二)および発電量を指示し、その全量を買い取るなど共同性の強い関西電力の3社。

建設予定地は、住宅密集地まで400メートルという至近距離。しかも燃料は、健康被害と地球温暖化が懸念され、世界の大勢に逆行する石炭だけに、住民らは481人の調停申請人を先頭に昨年来、兵庫県公害審査会に、公害調停を申し立てていた。その調停が進行中の8月30日、神鋼側が、経済産業省に工事計画書を提出したことから紛糾。

住民側は、神戸の石炭火力発電を考える会の名前で「公害調停の手続きを無視し、制度を冒するもので、調停を続ける意味が失われた」として、抗議声明を出すとともに、新設発電所分については調停申し立てを取り下げ、建設・稼働の差し止めを求める民事訴訟を神戸地裁に起こした。一方、既設分などについては、諸要求が残るため、調停を継続する。建設予定地での見学・説明会も実施の予定で、10~11月での開催を神鋼側と調整中。

【86歳から2歳まで参加】

このほど提訴した原告は、86歳から2歳までの31世帯40人。「子どもたちにつなぐ未来を今つくるために」を掲げ、ぜんそくに苦しめられた小学生の娘を持つ神戸市灘区の母親をはじめ、東灘区などでの家族ぐるみ参加や芸術家なども含む、多様な参加形態が目立つ、原告団は年内にも第2次募集を始め、サポーター制によって「次世代型訴訟」を、物心両面で支える体制をつくる。

弁護団によると、新たな火力発電所の建設・稼働を差し止める訴訟や環境影響評価(アセスメント)を通った大規模発電所をめぐる訴訟は、日本で初めてという。

神鋼が、新規建設予定の第3、第4石炭火力発電所は、2基合計で設備容量は130万キロワット。3号機(新設1号機)が2021年度、4号機(同2号機)が22年度での稼働を予定。

新設の発電所による大気汚染物質の年間排出量は、SOx(硫黄酸化物)が289トン、NOx(窒素酸化物)が601トン、煤塵80トン。二酸化炭素排出量は新設分で692万トン、既設分との合計では1482万トンにのぼる。

石炭火発は、初期投資がかさみ、採算性が問われ、融資を断る金融機関が世界的に急増して、生命保険会社などの投資も撤退が相次いでいるだけに、環境・健康破壊とも併せて神鋼の経営姿勢が疑問視されている。

17年10月に起こった品質データ改竄問題をも含め問題が多い神鋼に加えて、この間、一貫して問われているのが、地元・神戸市(久元喜造市長)と国(経済産業省)の姿勢だ。

神戸市は、新増設計画の提出と前後して、神鋼側と環境保全協定を締結し直したが、改定交渉を少数の職員が密室で行ない、結果だけを公表するなど、市民への説明もなく、行政の説明責任も果たしていない。

内容的にも、現状に比べて大気汚染物質の大幅排出増を事実上、認めるもので、実効性のある地球温暖化対策も盛り込めず、国際合意にも反している。

加えて、市民が要請していた「発電所からの汚染物質等の排出についての、インターネットでの常時公開」についても、協定で位置づけておらず、不当として住民側は、久元市長あてに抗議文を提出。今年は、西日本豪雨など、全国で激甚な自然災害が発生し、熱中症による死者も増加しただけに、神戸市は神鋼側に文字通り最大限の環境保全措置を求めるべき、と強調している。

神鋼は安倍晋三首相が3年間勤務し、現在も密接な関係で知られる。神鋼の強引な手法の背景には「安倍案件」があるのではないかと批判があがっている。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、2018年9月28日号)

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