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生徒は混乱し教師の負担は増?
文科省の新しい高校成績評価案とは
永野厚男|2018年11月2日11:24AM
高校の各教科の成績評価で、5段階評定をなくす保証なきまま、3段階の観点別評価を義務化。「スクラップなきビルド」になり、教員の多忙化を加速しかねない通知を、文部科学省は2018年度内に発出する方針だ。
学習指導要領改訂(小中は17年3月、高校は今年3月)を受け、児童・生徒の学習評価のあり方を検討している中央教育審議会・ワーキンググループの9月20日の会合(以下、WG)と、10月1日の中教審・教育課程部会で、文科省がたたき台として示した。
学校教育法施行規則第24条第1項は、各校に指導要録(指導に関する記録等)の作成を義務付け、文科省の出す参考様式に観点別評価の記載欄がある小中学校は、記述式の道徳などを除く各教科で、観点別評価(小学校3年以上A~C3段階)と、これらを総括的に捉える評定(小3以上3段階、中学5段階の数値)を記載している。
通知表は小学校では観点別評価だけの学校と、評定も記述する学校に分かれるが、中学校は通知表も高校入試で使う調査書も、観点別評価と評定の両方を載せる。
一方、高校は指導要録の参考様式に観点別評価の記載欄がないので、文科省は冒頭の通知にその記載欄を設けようとしているのだ。
だがその観点は、学習指導要領下、各教科「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」の四つもある(改訂では三つ)。現在、多くの公立全日制高校の1学級定員は40人だ。5学級以上教える教員も多く、専門教科とはいえ、200人超の生徒を4観点に分節し3段階評価し、その結果を5段階評定にまとめる作業は、「教師にとって負担である」と、前記たたき台すら明記している。
WGでは「推薦入試増の大学では『評定平均3・5以上』等の代替は想定しがたい」との発言も。評定の存続が不明では、生徒は進路で判断する目安がなく混乱する。
観点別評価を義務化するなら最低限、評定廃止に踏み切るべきだ。
(永野厚男・教育ジャーナリスト、2018年10月19日号)