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「明治150年式典」批判集会で高嶋伸欣氏ら戦前回帰を指弾
星徹|2018年11月14日12:13PM
政府は10月23日、「明治150年記念式典」を東京・永田町の憲政記念館で開催した。安倍晋三首相は式辞で、明治時代の「光」の側面をことさら強調し、列強諸国の脅威を理由に被害意識を煽った。その一方で、「影」の側面を具体的に語ることはなかった。天皇・皇后は参加せず、式典は20分ほどで終了した。
この政府式典に抗議する「『明治150年礼賛式典』徹底批判!緊急集会」が同日午後、衆議院第二議員会館で行なわれた。会場は野党国会議員を含む約150人で満席となった。主催は、村山首相談話を継承し発展させる会。
主催団体の藤田高景理事長は、政府式典について、「日清・日露戦争や朝鮮半島の植民地化、中国大陸への侵略から真珠湾攻撃に至る軍国主義、その先の広島・長崎への原爆投下などが、まったく顧みられなかった」と厳しく批判した。
政治評論家の森田実氏は、「日清戦争と日露戦争で日本人は驕った。明治は素晴らしい時代だったという考えは大間違いだ」と指弾した。
立憲民主党・共産党・自由党・社民党・沖縄の風の国会議員による力強い連帯挨拶もあった。
日本国内では「日本は明治まで悪くなかったが、昭和になって悪くなった」という史観が今でも広く浸透している。しかし徐々に「本当にそうなのか?」「明治と昭和は連続していたのではないか?」と疑問に思う人も増えつつある。その逆に、安倍首相のように、明治も昭和も悪くなかった、日本はずっと美しい国だった、と妄信する層も存在するのだが。
高嶋伸欣琉球大学名誉教授(教育学)は、キーノートスピーチ「明治150年礼賛式典を村山首相談話の視点から斬る」を行なった(以下、追加取材を含む)。
高嶋氏は、今回の安倍首相の式辞について、「(かつての植民地支配と侵略の事実を認め、反省とおわびの気持ちを表明した)『戦後50年村山首相談話』(1995年閣議決定)への関心を反らせようとした」と指摘し、「『明治150年』の影の側面を無視しており、歴史全体を歪めている」と厳しく批判した。
【「戦前レジームへの回帰」か】
安倍首相は「戦後70年談話」(2015年閣議決定)で「村山首相談話」を否定しようと試みたが、彼にとっては不完全なものとなった。かつての植民地支配と侵略の事実をぼかし、かつ相対化し、反省とおわびの気持ちについては「繰り返し……表明してきました」と他人事のように述べてごまかした。そして、今回の式辞だ。
高嶋氏は、「政府が地方にもさんざん働き掛けてきたのに『昼休み集会か?』と思われるような小規模な式典になった」と指摘し、「安倍首相による歴史偽造の目論見は完全に失敗している」と語った。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「第2次世界大戦に入っていった日本の責任をしっかり検証しなかったこと、そして戦後に『一億総懺悔』などと言い特定の人間の責任を追及せず、そうした人が日本の中枢部に復帰していったことが、今回の『明治150年礼賛式典』につながっている」と指摘した。そして、「結局、明治というものが第2次世界大戦での日本の暴挙を生み出した」と批判した。
元文部科学省官僚の寺脇研氏は、今年度から小学校で「道徳」が教科化されたことに関連して、「(教育勅語で強調された)犠牲の精神を美化するような教科書も出てきた」と指摘した。そして、「油断していると、明治の時代が一番よかった、教育勅語の時代がよかった、という話が復活する可能性もある」と警鐘を鳴らした。
纐纈厚明治大学特任教授(近現代日本政治史)は、「明治150年」を「前期(1945年まで)」と「後期」に分けたうえで「日本会議や安倍首相らは『前期』に舞い戻ることによって日本を“取り戻そう”としているのではないか」と指摘した。そして、「安倍首相の言う『戦後レジームからの脱却』は『戦前レジームへの回帰』以外の何物でもない」と指弾した。
(星徹・ルポライター、2018年11月2日号)