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玉城沖縄県知事、米国で辺野古の実態告発へ
横田一|2018年11月19日10:19AM
防衛省沖縄防衛局は11月1日、石井啓一国土交通大臣(公明党)が10月30日に埋立承認撤回の執行停止を決定したのを受け辺野古新基地建設工事を2カ月ぶりに再開。立入禁止海域を示すフロート再設置をした上で、早ければ11月中にも埋立土砂を投入する方針だ。
これに対して玉城デニー知事は緊急会見で「法治国家においてあるまじき行為」「政権内の自作自演」「県知事選で示された民意を無視」などと安倍政権を厳しく批判した。会見で玉城知事がまず批判したのは、今回の執行停止が法律の濫用であることだった。
「国の機関である沖縄防衛局には私人の権利利益の救済制度である行政不服審査法による審査請求等の適格が認められない」
「10月26日には110名もの行政学者により、『国民のための権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するもの』と指摘され、執行停止申立と共に審査請求も却下するよう求める声明が発表された。しかし国土交通大臣は沖縄防衛局長が一私人であることを認め、県の意見書提出から5日後という極めて短い審査期間で執行停止の決定を行なった。今回の決定は結局、結論ありきで中身のないものだ」(10月30日の会見での発言)
防衛省が私人になりすまして不服審査請求に踏み切ったのは、安倍首相と玉城知事の初面談の5日後の10月17日。しかも安倍首相は「県民に寄り添う」「基地負担軽減」と口にしていた。「二枚舌」「言行不一致」にしか見えない安倍首相に玉城知事は怒りを露わにした。
「私は『対話でもって協力する関係を築くよう努力をすることが政府の姿勢である』と思いますし、このような措置に出ることについては非常に残念でなりませんし、また強い憤りを覚えます」(同)
翁長雄志前知事を支えた謝花喜一郎副知事も10月30日の野党合同ヒアリングで、目を真っ赤にし、怒りで声を震わせながら訴えた。
「実は8月4日、私は翁長知事に呼ばれて病室でお会いしました。『本当は(埋立承認撤回を)僕がやりたかったけれども、もしもの場合は君に頼む』と仰られ、私は『そんなことはない。是非、知事頑張って下さい』と言ったら、点滴を続けながら『そうだな』と言って笑っていた。その4日後に亡くなってしまったのです」
「翁長知事が本当に命がけでやったものを、(石井国交大臣が)このようにいとも簡単に、数ページで決定がなされることに沖縄県民は本当に怒っております」
【血税で“欠陥基地”を建設?】
謝花氏は埋立承認撤回の理由の一つとして、新基地予定地が「マヨネーズ」にもたとえられる軟弱地盤であることも野党議員に説明。この問題については、10月17日の野党合同ヒアリングで辻元清美国対委員長(立憲民主党)が防衛官僚を問い質し、「地盤調査の結論が出る前に法的措置(不服審査請求)に踏み切った」という発言を引き出していた。しかも軟弱地盤強化の地盤改良には知事承認が必要だが、これを玉城知事は認めないと繰り返し強調。そのため、美しい海を破壊する埋立工事に数千億円の血税を投入した挙句、米軍の使用に耐えない“欠陥新基地”しかできない恐れがあるのだ。
工事をゴリ押ししようとする安倍政権に対し、玉城知事は「民意を無視することは絶対に許さない」と徹底抗戦を表明。今回の執行停止に対して国地方係争処理委員会への審査申出を早急に行なうことに加え、11月6日には10月12日に続いて菅義偉官房長官と二度目の面談で民意重視を訴える一方、早期訪米も具体化。10月30日の会見では「11月の訪米もありうる」と語り、民意も法律も軟弱地盤も無視する安倍政権の実態をアメリカ世論にも訴えることに意欲を示していたが、11月11日にニューヨーク大学で講演するなど同16日までの訪米日程が同5日に発表された。
朗報も玉城知事に舞い込んできた。埋立用の土砂を搬出する本部港が台風で損傷して使用の目途が立たなくなったのだ。埋立土砂投入が迫る重大局面で、安倍政権のゴリ押しが目立ってきた。沖縄の民意をないがしろにすることは許されないのだ。
(横田一・フリージャーナリスト、2018年11月9日号)