玉城沖縄県知事、ニューヨーク大学で講演
「新基地地盤は軟弱」
横田一|2018年11月27日12:30PM
辺野古新基地建設阻止を訴えるために11月11日から16日の日程で訪米した玉城デニー沖縄県知事が11日、ニューヨーク大学で講演。沖縄県出身者や一般市民ら約140人の参加者に「日米の市民が自分のこととして捉えて解決策を考え、太平洋を越えて一緒に行動する輪を広げてほしい」と訴えた。
玉城氏は国会議員時代に3回の訪米経験がある。これまではワシントンDCでの活動が中心だったが、今回は「多様性に溢れているニューヨークからスタート」。父が米海兵隊員で、自身がいじめられた生い立ちを紹介しつつ、こう強調した。
「沖縄における多様性は、生きるためのたくましさを必要としながらも、人としてのチムグクル(真心)を失ってはいけないアイデンティティとして沖縄県民が持っているまぶい(魂)でもあります」
「沖縄とアメリカの関係は非常に深く、そこから私も生まれました。沖縄の多様性とは私のような存在であり、親から沖縄の魂を受け継いだ子どもたちであり、沖縄に触れてきた数多くの軍人軍属です。私はこの多様性を誇るべき民主主義の力に変えてほしいのです」
同時に玉城知事は、沖縄の厳しい現実についても語った。
「沖縄県は日本と米国と三者対話を持ちたいと切望していますが、アメリカは日本に対して『それは日本国内の問題だ』と片付けてしまいます。沖縄がアメリカに直接米軍基地に関する苦情を訴えると、アメリカは苦情を日本政府に回します。そして日本政府は地位協定などを理由として沖縄からの苦情を切り捨てる。こうした状況下で沖縄県民は一体どのようにして声を上げることができるのでしょうか。沖縄からの声はどこに届ければいいのでしょうか。沖縄県は政治的かつ法的に手段を尽くして、辺野古の新基地建設を阻止しようとしていますが、政府の扉と、法律の門は閉じつつあるという厳しい現実に直面しています」
【鍵を握る「軟弱地盤問題」】
玉城知事が次のように呼びかけて講演を終えると、参加者から大きな拍手が沸き起こった。
「豊かな自然環境と互いの友情を将来の子どもたちにつなげるため『正しい』と心から信じる声と行動が必要です。お互いの沖縄のためにみなさん、立ち上がって是非行動して下さい。あなたの国の政府にアメリカの民主主義の誇りを沖縄にも届けるようにどうぞ要求して下さい。沖縄県民に残された時間はあまりありません。しかしみんなが立ち上がれば変化が起こります。日米両政府が辺野古の新基地建設を断念するまで是非動いていこうではありませんか」
玉城知事が何度も強調してきたのが予定地の軟弱地盤問題だ。この日は活断層の存在にも触れた。
「(新基地予定地の)海底には軟弱な地盤があって、しかもその下には活断層まである問題が明らかになるなど、建設費用の面でも工事期間の面についても政府の説明が全くなされていない。(軟弱地盤改良などの設計変更で)沖縄県知事の許可も得ないといけない手続きも出てきます。私は、日本と米国と沖縄の三者で対話を行なって、『辺野古新基地計画は止めるべきである』と明確に伝えないといけないと思っているわけです」
この軟弱地盤問題が海兵隊を含む米軍や米国政府の関係者に伝われば、新基地建設阻止の大きな追い風となる可能性は十分にある。普天間基地の代替施設にならない“欠陥基地”を作るために、莫大な血税を投入して美しい海を破壊していることになるためだ。沖縄の地元記者は話す。「日本政府が軟弱地盤のことを米側に正確に伝えていない可能性は十分にある」。
今回の訪米では、米国政府の国務省や国防総省、海兵隊関係者との面談が予定されている。日本の外務省は、訪米をした佐喜眞淳宜野湾市長(当時)には国務省高官、翁長雄志前知事には同省部長クラスの面談をセットする差別的対応をしたが、今回の玉城知事でも同じ対応をする可能性がある。玉城知事と米国政府高官との面談が実現し軟弱地盤問題を伝えられるかが注目される。
(横田一・フリージャーナリスト、2018年11月16日号)