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BTS騒動は韓国発、保守系サイト経由? 
デマ拡散の真相は

岩本太郎|2018年12月4日10:26AM

11月14日、ライブ会場の東京ドーム前でBTSメンバーの写真に群がるファン。(撮影/岩本太郎)

世界的な人気を持つKポップグループ「防弾少年団(BTS)」メンバーの1人が、第2次世界大戦における原爆投下時のキノコ雲の写真などが描かれたTシャツをライブで着ていたことに端を発した騒動が晩秋の日本を揺るがした。BTSが11月9日に予定していたテレビ朝日系「ミュージックステーション」への出演は直前に中止され、噂された大晦日のNHK「紅白歌合戦」出場もその影響かどうか実現せず。また、同13、14日には東京ドームでBTSのライブが開催されたことから彼らに抗議する団体が会場周辺で抗議を行なうなどの騒動に発展した。

今回の件が日本で広がったきっかけは韓国のネットニュースで10月中旬に報じられた話題を、ネットメディア「まいじつ」(『週刊実話』を発行する日本ジャーナル出版などが運営)が10月20日頃に報じた「『原爆バンザイTシャツ』の韓国グループを“紅白内定”したNHK」という記事のようだ。

くだんのTシャツが「韓国内で物議を醸している」として「日本のテレビ局も慌てている」「一番アブラ汗をかいているのはNHK」などと紅白出場の件に絡めて伝えているのだが、それを見た高須克弥氏(高須クリニック院長)がツイッター上で10月20日に「これは許すべきではない。放置した韓国政府に謝罪を要求すべきだ」などと書き込むと瞬く間に拡散(11月19日時点でRT数は約1万6000)。10月25日には『夕刊フジ』のウェブメディア「zakzak」が「紅白出場内定報道で批判殺到高須院長の怒りツイートで拡散」と、10月26日には『東京スポーツ』がBTSの「“反日活動”が韓国内で絶賛されている」などとサイト上で取り上げた。

あの在特会(在日特権を許さない市民の会)元会長の桜井誠氏(現在は「日本第一党」党首)も、11月5日には自身のブログで「原爆少年団」と他者の名前を捏造・誹謗しながら「ミュージックステーション」の広告主企業への抗議行動を煽っていた。保守系の「バズプラスニュース」も11月11日には「BTSがユニセフ(UNICEF=国際連合児童基金)事務所に『原爆看板』持ち込み問題視」されたと報道(「看板」が日本に投下された原爆の形状を模しているという根拠だったが実際のモデルは飛行船。明らかなデマ)。このように、韓国内の話題だったものが保守系論者やネットニュースにより捻じ曲げられ、さらにはSNSなどで拡散されたわけだ。

【2日目の会場周辺は平穏】

だがネットやマスメディアとは対照的に、BTSの主要なファン層(10代から中高年までの女性)は一連の騒ぎを意外と冷静に受け止めているようだ。筆者はライブ2日目の開演数時間前より現場の状況を観察していたが、会場の東京ドーム周辺を埋め尽くしたファンの表情や振る舞いに通常のライブ会場周辺との特段の違いは見られなかった。前述の通り、初日にはネット右翼またはその仲間(?)と思しき集団も抗議にやってきたと報じられたが、2日目のこの日はそうした姿も見当たらず「抗議に対して抗議する」といったファンの動きも確認できなかった。

無論「原爆Tシャツ」や、他でも報じられた「ナチスの制服を模したステージ衣装」などを公の場で着用したBTSメンバーの行為は、本人たちの意図せざる部分はあったとはいえ批判されて然るべき要素はある。だが、すでにBTS自身が公式にウェブ上、または前述のライブで謝罪や釈明を逐一行なっているほか、熱心なファンたちもBTSの行為を容認しないにせよデマではない正しい情報をSNSなどで拡散に務めている。

もとより、日本はおろか全米ヒットチャートで1位を獲得し、ドームを超満員の観客で連日埋め尽くすほど分厚い支持層を持つグループだ。猛烈なバッシングに晒されているとはいえ多勢に無勢なのは保守系メディアやネトウヨ、あるいは「紅白歌合戦」「ミュージックステーション」という「日本ローカル」の番組への出演キャンセルを大ごとのように報じるマスメディアのほうだといえる。

(岩本太郎 ・編集部、2018年11月23日号)

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