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リニア新駅建設で相模原市の伝統校が移転に 
市民の惜しむ声

井澤宏明|2018年12月12日10:30AM

地域を100年近く見守ってきたクスノキを見上げる散策会の参加者たち。(撮影/井澤宏明)

横浜駅から電車で約50分、JRと京王橋本駅の目の前にある神奈川県立相原高校(相模原市)。交通の便利さもあり、県内各地から農業と商業を学ぶ生徒が通うユニークな専門高校だが、リニア中央新幹線神奈川県駅建設のため来春の移転が決まっている。11月10日には最後の市民散策会が開かれ、参加者約80人が別れを惜しんだ。

同校は1923(大正12)年、県立農蚕学校として開校。その年に発生した関東大震災では、生徒たちが収穫した野菜を自転車に積んで、横浜市に届けたという。

校内の並木道は、市民が通り抜けできる憩いの場。生徒が育てる牛、豚、ヤギやポニーは子どもたちに人気だ。学校で生産した「相原牛乳」「相原ポーク」「相こっこ卵」、野菜などは、校内で市民に販売する。東日本大震災でも、多くの帰宅困難者を受け入れた。

散策会は19年前から、市民団体「教育と緑ある橋本の町づくりを考える会」が開いてきた。会は1998年、駅南口開発と高校統廃合にからみ同校移転が持ち上がったことをきっかけに発足した。

最終回の案内役を務めた安藤弘明さん(66歳)は元同校理科教師で会の発足メンバーだ。「移転危機が何回もあり何とか持ちこたえてきたんですけど、とうとう移転することになってしまいました」。

クスノキ、ニッケイ、マテバシイ、タラヨウ、ムクロジ。10ヘクタール超の敷地に約150種類の木々。この日も家畜を世話したり大根を収穫したりする生徒や、散歩する保育園児の姿があった。

会代表の浅賀きみ江さん(69歳)は80年代、見知らぬ土地に引っ越してきて行く当てもなく、毎日のように子連れで同校に通った。「子育てをさせてもらった場所なので本当に残念。橋本の町の誇りだと思ってきました」と悔しがる。

同校跡は再開発され、のどかな風景は一変する。同校によると、移転先へは駅からバスを使い、待ち時間や歩行時間も含め約30分かかるという。

(井澤宏明・ジャーナリスト、2018年11月30日号に加筆修正)

 

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