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築地「営業権」主張業者、豊洲の業務停止処分取り消し求め提訴
永尾俊彦|2018年12月20日9:49AM
東京都は、解体が進む築地市場に私物を残していた仲卸業者2社に12月1日から移転先の豊洲市場での業務停止30日間の行政処分をした(11月26日付)が、2社はその取り消しを求めて近く東京地方裁判所に提訴することを決めた。
2社は、築地市場の解体工事を止めるため、10月に豊洲市場に移転した後も、冷蔵庫などを築地市場の自社の店舗内に残していた。
これに対し、都は「自己の費用で当該施設を原状に復して返還」する義務を定めた東京都中央卸売市場条例91条に違反したとして処分した。
都の担当者は、筆者の取材に「2社は、築地市場の閉場までという使用指定にともない営業をしていましたが、閉場(10月10日)で市場の使用資格がなくなったのに原状回復をして店舗の返還をしなかったので処分しました」と説明した。
かきいれ時の12月の業務停止は大打撃だ。営業権を主張して築地市場を守るために今年6月に結成された2社を含む築地市場営業権組合によれば、12月は平常月の約3倍の売り上げになるという。
都の行政処分について、同組合の助言者である熊本一規・明治学院大学名誉教授はこう反論する。
「たとえば、大家さんがアパートを建て替えるので間借り人に出ていってもらう場合、大家さんの都合で建て替えるのだから、間借り人の引っ越し費用は負担するのが慣行です。逆に間借り人の都合で出て行くなら引っ越し費用は当然本人が負担します。つまり、大家の都合なのか間借り人の都合なのかがポイントです。築地市場の場合、大家である都の都合で勝手に豊洲移転を決めたのに間借り人である仲卸業者の引っ越し費用すら負担していません。しかし、91条は使用者、つまり仲卸業者ら間借り人に原因があって使用資格が消滅した場合に原状回復と返還の義務を定めた条例ですから、何の落ち度もない仲卸業者にこの条例を適用すること自体が違法なのです」
行政処分に「重大かつ明白な瑕疵」がある場合には無効になる。
その上、仲卸業者には憲法29条が保障する財産権である営業権があり、侵害される場合は損失補償が必要なのに都は一切の補償をせず、築地市場を土壌汚染やアクセスの悪さなどから売り上げ減が明らかな豊洲市場に移転させた。
千葉市中央卸売市場が移転した際、千葉市が卸売業者に支払った損失補償の適法性が争われた裁判では、東京高等裁判所は憲法29条から適法だと判示して(1991年)確定した判例もあり、2社は勝算はあると見ている。
「買い物ツアー」の資料提出命令
今回の行政処分には、築地市場営業権組合が同市場を守るために毎週火・土の午後1時から築地市場正門前で缶詰やのりなどを販売する「買い物ツアー」をやめさせたいという狙いもあると見られる。「買い物ツアー」は、10月に有志が同組合を応援しようとツイッターなどで呼びかけた。毎回数十人が集まり、2カ月以上続いている。
都は、2社に文書で「買い物ツアー」の取引状況を示す仕入帳、売上帳、伝票などを提出せよとも命じた(12月6日付)。
このような都の処分や命令から、「買い物ツアー」への参加を見合わせた同組合の組合員もいる。
しかし、今回処分された2社のうちの1社を経営する村木智義さんは、「ここで引いたら一生後悔する」と闘い続ける決意を語った。
(永尾俊彦・ルポライター)