ハンガリー、「ジェンダー学」廃止へ
小林智香子|2018年12月26日7:05PM
右派ポピュリストのオルバーン・ヴィクトル首相の下で10月13日に発効された政令により、ハンガリーではジェンダー学を教える大学がなくなる。ジェンダー学のコースに在籍中の学生は学位を取得するまで残ることが許されるが、2019年からはジェンダー学科への入学や同学科の新設が禁じられることになった。
ハンガリーで現在、ジェンダー学科がある大学院2校のうち1校は、首都ブダペストにある中央ヨーロッパ大学(CEU)。政権はこのリベラルな学風の大学を狙い撃ちする法整備(外国大学の登録規定厳格化)を昨年4月に行ない市民やEUからも批判を浴びた。今年12月1日、CEUはオーストリアのウィーンに移転し9月の新学期を迎えることを決定。政権との妥協策を探ったが、政権が存続を認めなかったことを明かした。
首相の報道官はCNNの取材に対し「政府は、人間は男か女かに生まれるという立場を取っており、生物学的な性別ではなく、社会的概念のジェンダーを議論することを容認できない」と回答。AFP通信によるとシェムイェーン・ジョルト副首相も「ジェンダー学は科学ではなくイデオロギーであり、大学で教えるようなものではない」と断言したという。
ハンガリー政府の対応をCEU側は「学問の自由に対する目に余る侵害」だと非難し、「ヨーロッパにとっても、ハンガリーにとっても失意の日だ」と訴えた。
(小林智香子・ライター、2018年12月14日号)