カタカナ英語
小室等|2018年12月31日7:30AM
知ってのとおり福島智さんは、ヘレン・ケラーと同じ障害の盲ろう者である。
福島さんは現在、東京大学の附置研究所である、東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野の教授をなさっている。
先端科学技術とは何なのかと思ってホームページの、先端科学技術研究センター所長の挨拶文を見ていたら気になったことがある。
〈(前略)現在、生物医化学、環境・エネルギーから情報、材料、そして社会科学、さらにはバリアフリー分野をカバーし、各領域で展開が図られています。さらにこれら多様な研究力を生かし、先端研全体の事業として、地方自治体や地域産業との包括的な連携プラットフォームの設置、誰もが最大の能力を発揮できる場を創造する「インクルーシブデザインラボ」の構築、そして若手研究者が存分に活躍できる「若手アライアンス」の構築を精力的に進めています。
先端研は、持てる研究力を最大限に発揮し、教員と職員が一丸となることでさらなるシナジーを生み、(後略)〉
カタカナ英語、多すぎない?
日本語に翻訳せず、英語のまま用いることが昨今多くなったことについて、『日本語の歴史』(岩波新書)の著者、山口仲美氏がスタジオジブリの小冊子『熱風』一〇月号のインタビューで言っている。
〈できることなら、翻訳したほうがいい。というのは、翻訳することで、本当の意味で日本人の血となり肉となるからです。「イノベーション」なんて言わないで、「技術革新」と翻訳していく。「アイデンティティー」なんて言わないで、「自己認識」と翻訳していく。そうすると、その意味内容がしっかり把握できて、知識がうわっ滑りしないのね。日本語に翻訳していくことで、そのことの真実をつかめるんですね〉
バリアフリー(物理的、精神的な障壁のない)、プラットフォーム(コンピュータ利用の基盤となる環境? これ僕には難しい)、インクルーシブ(包括的)、デザインラボ(デザイン研究室?)、アライアンス(企業連合)、シナジー(共同作用、相乗作用)。
山口さんの言うとおり、極力翻訳でいくほうがいいよね。
オッと、それでか。政治家がやたら英語を使いたがるのは、知られては都合のよくない真実をつかまれたくないから?
実は福島さんが作詞作曲をし、僕がそれを歌うという企画が勃発。今回はそのことを書くつもりだったのに、寄り道が長くなってしまった。僕の歌を、福島さんは聴くことが可能なのだろうか。
それについては、次回。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年11月23日号)