『人民新聞』編集長の控訴棄却
機動隊導入で抗議の支援者を退廷 大阪高裁
浅野健一|2019年1月18日6:52PM
「他人が使う目的を隠し銀行からキャッシュカードを騙し取った」として詐欺罪に問われた『人民新聞』(大阪府茨木市)の山田洋一編集長に対し、大阪高裁(樋口裕晃裁判長)は12月11日に控訴を棄却した。神戸地裁は7月、懲役1年・執行猶予3年の判決を言い渡していた。山田氏は上告する。
樋口裁判長は11月13日の初公判で、「一回結審」を強行していた。
判決公判は15時開始予定だった。14時50分ごろ約40人の支援者が201号法廷に入った時、すでに裁判官3人、検事が着席していた。支援者は傍聴席で「樋口はやめろ」「裁判無罪」とコールを始め、「山田編集長は無罪 ガサ入れへの国賠勝利」と書いた横断幕を掲げた。樋口裁判長らはオドオドしながら「騒ぐ人は退廷させる」などと制止したが声が届かない。裁判長は最前列の木村真・豊中市議を指さし退廷命令を発した。制服姿の警備職員6人が抵抗する木村氏を宙吊りにして法廷外に排除した。
裁判長の「派出」要請で大阪府警の機動隊員6人が法廷内になだれ込み、支援者は「警官は帰れ」などと抗議。コールは約20分続き、計6人が次々と退廷させられた。
裁判長は15時10分、「今から判決を言い渡します」と述べ、主文を読み上げた。声が小さく、よく聞こえない。樋口裁判長が強調したのは、山田氏が友人に預けたカードの使い方が「犯罪と無関係でも、銀行の規定に違反している」ということだった。そうであれば、銀行と山田氏の間で解決すれば済むのではないか。判決要旨の朗読中、山田氏の弁護人の橋本太地弁護士が立ち上がり「何が違法なのか」と聞く場面もあった。開廷時の「起立、礼」もなく、いつ開廷したかが分からない裁判だった。
山田氏は「裁判官たちは、前回の訴訟指揮がいかにひどかったのかが分かったのではないか」と話した。昨年11月に山田氏を逮捕し、人民新聞社を家宅捜索した兵庫県警公安3課は押収した読者名簿などをいまだに返還していない。同社は9月18日、大阪地裁へ国家賠償請求訴訟を起こしている。
(浅野健一・ジャーナリスト、2018年12月21日号)