委員長職権での安易な審議開催に歯止めを
西谷玲|2019年1月31日6:31PM
明けましておめでとうございます。と言いつつ旧年中の話で恐縮だが、臨時国会で外国人労働力受け入れ拡大のための改正入管法が12月に成立した。
ご存じの通り拙速にすぎる国会審議で、「すかすか」「生煮え」と批判されたように法案は中身がまったく詰まっておらず、審議のしようもなかった。国会が終了した直後に自民党の各部会でも改正法の中身や今後の流れについて説明されたが、「これじゃあよくわからない」という声が相次ぐ始末だった。
野党の追及によって、技能実習生に失踪者や死亡者がいたことなども明らかになったが、あれほど急いだ審議では野党の追及にも限界があった。
国会の仕組みとして、あれこれ実質的な審議をする委員会(たとえば今回の入管法の改正では法務委員会)では、原則として週2回の定例日が決まっている。
ところが、「原則として」と書いたように、これはあくまでも原則で、実際の審議では審議を急ぎたいと思えば委員長の職権で定例日以外にも委員会を開催してどんどん審議をすることも可能なのだ。今、国会では自民党が多数勢力だから法務委員長は与党出身。で、今回の入管法の審議ではそれが行なわれて、委員長はばんばん委員会を開きまくったわけである。
いかに野党が追及をしたいと思ったって、こんなに急いで連日委員会を開催されてしまえば、準備をするにも限界がある。しかも、法務省による失踪した技能実習生の調査結果についてはコピーや持ち出しが許されず、今時手書きでデータを書き写さねばならなかったのである。これでは分析しようにも余計に時間がかかる。まったく嫌がらせというか馬鹿にしているというか、噴飯ものである。
結果としてどうなるかといえば、野党の質問も踏み込み不足や「生煮え」となってしまう。で、官僚たちはこの質問への答弁を準備するために連日夜なべ仕事を強いられるわけである。
充実した議論のため、的を射た質問であれば、答弁を準備するのも面白く、たとえ残業をすることになってもやりがいもあり、彼ら自身にとっても政策を作る上で参考になるだろう。しかし、浅い中身の質問のために、連日深夜まで仕事をさせられると、彼らだってつらくなるのは理解できる。
しかも今、野党は国会の審議を補うためにフォーマルな国会議論ではなくて「野党合同ヒアリング」を開催して、役所の幹部を呼んであれこれ質疑をしている。
本来の国会の議論では足りないからこういう場を設けているわけだが、官僚らからすると国会質問の準備ですら大変なのに、なぜこんな余計なものを……ということになる。
ヒアリングでは時に重要なデータや答弁を引き出すことはあっても、本来の国会の場が機能していれば不必要なはずだ。野党の政治家と官僚の間に不信の連鎖を生み出しており、生産的でない。
どうすればいいのか。本来の国会審議の場を充実させることである。よほどの緊急を要する案件ではない限り、委員長職権で安易に審議を開けないようにする。審議時間もできるだけ野党の要求をのんで十分にとる。そういったことを国会のルールとして確立すべきである。でなければあまりにも国民に対して不誠実である。
(にしたに れい・ジャーナリスト、2019年1月11日号)