【タグ】安倍晋三|小泉進次郎|山梨県知事選|後藤斎|菅義偉|週刊新潮|長崎幸太郎
山梨県知事選に小泉進次郎氏や菅官房長官が現地入り
参院選意識
横田一|2019年2月8日11:33AM
安倍晋三首相が新年早々に「まず山梨で1勝」とはっぱをかけたとされる山梨県知事選挙(1月27日投開票)が「国対県民党」などを問い、現職と自公系新人が横一線の激しい選挙戦となっている。18日に小泉進次郎氏が大票田の甲府市(甲府駅北口)で街頭演説。20日には菅義偉官房長官が山梨市と笛吹市の集会で応援演説したほか、「100人規模の自公国会議員が現地入り、『停滞から前進へ』がキャッチフレーズの財務省出身の長崎幸太郎候補(元衆院議員・二階派、自民・公明推薦)支援を呼びかけている」(山梨県政ウォッチャー)という。
これに対して2期目を目指す現職の後藤斎・元衆院議員(立憲民主・国民民主推薦)は、自民党県連相談役の宮島雅展・元甲府市長が代表の「県政問題研究有志会」(保守系首長を含む元市町村長43人が参加)の推薦を受けるなど「県民党」を掲げて、「中央の権力対県民」の構図を強調。演説会では「山梨の良識を示そう」「県民による県民のための政治」「権力に負けるわけにはいかない」と訴える。
今回の山梨県知事選は、自公推薦候補が敗北した2018年9月の沖縄県知事選と共通点がある。同知事選では与党国会議員が大挙現地入りして佐喜眞淳候補(前宜野湾市長)支援に動く一方、野党幹部が街宣車上で玉城デニー候補(現知事)と一度も並ばないステルス作戦に徹し、自民党支持層の切り崩しに成功した。
また沖縄に続き山梨県知事選でも人気抜群の小泉進次郎氏が甲府駅北口で街宣。「その前には、報道関係者に非公開の創価学会婦人部向けの会合が設定されました。選挙活動に熱心な婦人部へのテコ入れと言えます」(地元事情通)
街宣で小泉氏は県知事選最大の課題もこなした。長崎氏と堀内のり子衆院議員(山梨2区)の間でマイクを握ったのだ。郵政選挙(2005年)で郵政民営化賛成の〝刺客〟だった長崎氏と、堀内氏の義父で民営化法案に反対(造反)した堀内光雄氏(元労働大臣)は以来熾烈な争いを展開。そこで今回立候補にこぎつけた長崎氏と支援を決めた堀内氏の対立融和を聴衆に訴えたのだ。だが裏返せば堀内派県議が長崎氏への投票は困難とコメントして地元紙に載るなど現在もシコリが残っているという。
【保守層は中央に反発?】
「二階俊博幹事長が極秘に現地入りしたのも対立解消に程遠い〝証〟。選対には現職衆院議員である堀内派地方議員が多く、二階氏の現地入りの日程調整をのらりくらりと遅らせたようです。自民党の都合を山梨県知事選に持ち込んだことへの反発もあります。3年前の参院選山梨県選挙区(1人区)は野党統一候補の宮沢由佳氏が自民系候補に勝利。自民党県連は今夏の参院選での連敗を避けるため、落選中の長崎氏が県知事ポストに横滑りすることで、両派が一枚岩になって参院選に勝利する布石との側面もあります」(山梨を含む選挙情勢に詳しい政治アナリストの平田多季氏)
菅官房長官も街宣で県知事選だけでなく4月の統一地方選や夏の参院選を意識。有効求人倍率増加や訪日外国人観光客増加などを安倍政権の成果として長々とアピールした後、「リニア新幹線が山梨に止まるようになった」と紹介。中央との太いパイプで地域経済を前進へと転換するには長崎氏が適任と最後に訴えた。
しかし、菅氏は集会場最寄りの山梨市駅と石和温泉駅に今春のダイヤ改正で特急あずさが停車しなくなる問題に触れなかった。両集会場に「絶対反対」の幟が立っていたにもかかわらず、である。
一方の後藤陣営は20日の大月での集会で「『週刊新潮 長崎幸太郎』で検索すると長崎候補の女性観が分かる」と過去の女性問題の記事を紹介。後藤県政下で初めて女性副知事が誕生し、女性登用が進み保育園問題も解決に向かっているとの実績を強調した。集会場の幟「継続は力」はこうした訴えと連動するものだ。
後藤県政批判の怪文書が出回り、前記『週刊新潮』記事に反論する書き込みも検索で出るなど、ネット上の選挙戦も激化。「安倍政権の命運を握る」(堀内氏)という県知事選の結果が注目される。
(横田一・フリージャーナリスト、2019年1月25日号)
※編注:1月27日投開票が行われ、自民党と公明党が推薦した新人の長崎幸太郎氏が初当選を果たした。