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Tカード「個人情報」令状なしに提供
「ツタヤ図書館」は大丈夫?
岩本太郎|2019年2月12日7:11PM
ポイントカード最大手の一つ「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、本社東京、増田宗昭社長)が、同カードに登録された氏名や電話番号などの個人情報のほか、商品購入履歴やレンタルビデオのタイトルなどまで裁判所の令状なしに捜査当局へ提供してきたことが明らかになった。
Tカードには約6800万人もの登録者がいるとされ、提携先もレンタル店から書店、コンビニ、飲食店と他業種に及ぶ。かつてこうしたデータは裁判所の捜査令状でもない限り外に出ないものだったはずだが、CCCでは2012年より刑事訴訟法に基づく「捜査関係事項照会書」があった場合にも捜査機関に協力してきたという(『朝日新聞』1月22日付)。日本の全人口の半数を超える人々の日常の買い物履歴などが警察の手に渡るシステムがすでにあったというわけだ。CCCはこれについて従来Tカードの会員規約に明記していなかったが、報道を受けて1月21日付で個人情報保護方針を「改訂」。その中で「協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」などは引き続き第三者に提供する方針を示した。
厄介なのはこれが前述の通り法に基づいて行なわれていることだ。京都大学大学院法学研究科の曽我部真裕教授(憲法・情報法)も『毎日新聞』(1月22日付)記事での談話中、「個人情報保護法は、法令に基づく場合の第三者提供を認めている。捜査事項照会は刑事訴訟法に基づくものであるため、違法とは言えない」と述べている。同日付『日刊ゲンダイ』によれば警察はTカード情報をもとにコンビニで「捜査員が待ち伏せして身柄を拘束した事例もあった」という。今はこうした実態に「社会的情報インフラとしての価値」を認める風潮が、CCCのみならず世間全般に少なからずありそうなのが悩ましいところだ。
【「本社よりお答えします」と市立図書館は回答】
CCCは近年「指定管理業者」として各地で公共図書館の運営に次々に参入している。こうしたいわゆる「ツタヤ図書館」で書籍などの貸し出しカードとしてTカードが使用可能だ。
13年に全国で初めてCCCが指定管理者となった佐賀県武雄市図書館には、この件の報道が出た着後の21日にさっそく問い合わせが数件あったという(『佐賀新聞』1月22日付)。首都圏の「ツタヤ図書館」第1号として15年にCCCほかが参入のうえリニューアルオープンした神奈川県の海老名市立図書館は同25日、公式サイトに同市教育委員会とも連名で、図書の貸出において利用者の個人情報や貸出履歴をCCCに「提供しておりません」との告知を掲出した。だが筆者による問い合わせに同館は「当館からはお答えできませんので本社(CCCのこと)よりお返事します」と、「市立図書館」としての独自の回答はしなかった。CCC広報からは「個人情報や貸し出し履歴が各図書館から当社に提供されることはない」とし、今回の件での各図書館に問い合わせ数などは「各館に聞いてみないと不明」との回答だった。
図書館の利用者情報については、オウム真理教による地下鉄サリン事件発生直後の1995年4月に捜査当局が国立国会図書館から利用申込書など約53万人分を押収した事例が知られるほか、昨年末にも北海道の苫小牧市立中央図書館が警察の照会を受けて特定人物の図書の貸し出しや予約状況に関する履歴情報を提供していたと報じられた。前者では国会図書館側は照会を拒否したと言われるが、後者では苫小牧市の教育委員会が差し押さえ令状のない任意協力の要請段階で捜査協力を決め、同図書館も応じたという(『苫小牧民報』2018年11月13日付)。同図書館も民間の図書館流通センターが指定管理業者として運営している。こうした中で各地の公共図書館が続々「ツタヤ化」されている現状にはやはり懸念を覚えざるを得ないところだ。
(岩本太郎・編集部、2019年2月1日号)
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