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学校“働き方改革”で中教審が答申
上意下達の学校作りを強化
永野厚男|2019年2月15日8:13PM
中央教育審議会が1月25日に出した学校“働き方改革”の答申は、文部科学省が増やしてきた政治色濃い“調査”を反省せず、上意下達の学校組織作りを謀んでいる。
同省財務課(合田哲雄課長)は2018年12月6日、中教審の特別部会で学校“働き方改革”の答申素案を公表し、21日までパブリックコメントを実施。1月11日の特別部会等に意見募集結果(3208件のパブコメから抜粋し、A4判12頁半に要約)と素案の一部修正を報告後、答申として出した。
まず、答申素案の「同じような成果であればより短い在校時間でその成果を上げた教師に高い評価を付与することとすべきである」というくだり(改定地方公務員法で毎年の人事評価は給与に連動)。
これに対するパブコメは、賛同意見と、「教職員の自己責任が問われ、長時間過密労働の要因を個々の教職員の意識や能率に矮小化」「教職員の協力・協働で成果を上げていく学校現場にはなじまない」など、反対意見の両方がある。
しかし答申は、素案を一切改めず「文部科学省が行う表彰においてそのような観点を考慮したりするなどして積極的な普及啓発を行うべき」と加筆。傍聴した元教諭らは「開き直り」と憤る。
二点目。文科省や教育委員会が実施する“調査”について、答申は「不断の見直しを進めなければならない」などと明記。だが文科省自身が、児童生徒より政治の方を向き、教委を通じ全国の公立小中高校等(後掲の(2)は3万8970校対象)に以下の“調査”を強行してきた行為への反省はない。
(1)02年4月入学式で実施率を小・中で99・9%、高校100%にするまで20年近く都道府県教委に「斉唱した、メロディだけ」等やらせてきた“君が代”関係、(2)13・14年度の職員会議での挙手・採決、(3)下村博文文科相在任時の『私たちの道徳』使用状況など。
三点目。答申素案は「校長や副校長・教頭に加え、主幹教諭……等のミドルリーダーがそれぞれのリーダーシップを発揮できるような組織運営を促進」「主幹教諭の活用を促進」と記述。
【パワハラ多発に言及なし】
パブコメ結果は、18年5月の自民党教育再生実行本部『中間まとめ』と同文の「主幹教諭の全校配置を積極的に検討すべき」、「上意下達による管理強化であり、学校の協力・協同体制が阻害される。上下関係……から一人一人が平等な学校運営を進めるため、主幹教諭よりも教職員定数全体を増やすべき」など、賛否両方を掲載。だが答申は素案通りだった。
トップダウンの学校運営では一般教諭は“やらされ感”が増し自己肯定感が一層低まる恐れがあるが、“上司”から“部下”へのパワハラの多い事実にも答申は言及なし。
四点目。“教員免許更新制”(第1次安倍政権が法改定し、教員免許状を有効期限制に。教員は10年ごとに自費で30時間の免許更新講習を受講・修了しないと失職)は、学校多忙化の真因の一つ。
「免許更新制の実質化も含め……改善・見直し」と記述した答申素案に対し、パブコメ結果は「更新制……は教員の負担及び教員不足の原因。廃止・抜本的見直しについて検討すべき」と記述した反対意見だけで賛同意見の掲載はない。だが答申は「免許更新制がより教師の資質能力向上に実質的に資するようにすることも含め……改善・見直し」と当たり障りない字句修正だけで、廃止要求は拒否。
最後に、「通常期の勤務時間を延ばす代わりに、児童生徒の夏季長期休業中の勤務時間を短縮。有給休暇を消化させる」という「1年単位の変形労働時間制」で、答申素案は「適用……できるよう法制度上措置すべき」と明記した。
これに対しパブコメ結果は、賛同意見と、「学校にはなじまない」「見かけの残業を減らすだけ」「夏休みにまとめて休」めても「1学期中の疲労が回復できるわけではなく、夏季休業を待たずに倒れる者もいる」など反対意見を併記。
だが答申は、育児・介護等ある教員への「配慮」を若干加筆するに留め、骨格は全く変えなかった。
(永野厚男・教育ジャーナリスト、2019年2月1日号)