不妊強制手術への補償
一時金320万円と発表、被害者は「見下された」
大橋由香子|2019年4月2日12:50PM
優生保護法によって不妊手術を強要された被害者への補償が求められているが、与党の作業チームと超党派議員連盟が3月14日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案」を発表した。
「できるだけ早く、対象はなるべく広く、これで終わりではない」と議連の尾辻秀久議長(自民)も与党作業チームの田村憲久座長(自民)も語った。
手術の内容に関して、レントゲン照射など優生保護法に違反する手術も含めた点は評価できる。「我々は、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする」の「我々」は国、政府、地方公共団体も含まれるとの説明と、「国がこの問題に誠実に対応していく」の条文と合わせれば、「国のお詫び」だと解釈できなくもない。
だが、一時金は一人あたり320万円のみ。社会制度が異なるスウェーデンの例を参考にしたというが説得力がない。「障がい者であることを理由に強制不妊手術されたうえに、見下されたような一時金。さらに障がい者の名誉と尊厳は傷つけられます」と原告の義姉・佐藤路子さん(仮名)も憤る。
一時金を受けるための審査会では、書類がなくても柔軟に判断するという。だが、優生手術を推進した旧厚生省(現厚労省)に設置した審査会で、偏見のない対応ができるか疑問だ。また、優生保護法の過ちを国民に周知しなければ被害者の名誉は回復されず、申請すらできない。「相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」を目指すなら、ハンセン病における検証会議のような調査体制が必要である。
現在、7地方裁判所に20人が国家賠償請求を提訴中で、全国被害弁護団は、被害の重大性に向き合う補償額を求めている。超党派議連は、被害者が納得できる補償へともう一歩踏み込むべきだ。
(大橋由香子・フリーライター、2019年3月22日号)