「駐留米軍は違憲」伊達判決から60年
砂川事件元被告らが国賠訴訟提起
片岡伸行|2019年4月9日11:58AM
「駐留米軍は違憲、基地侵入は無罪」との伊達判決(東京地裁・伊達秋雄裁判長、1959年3月)から60年。同年12月にその一審判決を覆す最高裁判決を出した当時の田中耕太郎最高裁長官が駐日米大使らに、審理進行中の裁判情報を漏洩・提供していたことは憲法37条が定めた「公平な裁判を受ける権利」を侵害するものだとして、「伊達判決を生かす会」の土屋源太郎さん(84歳)=砂川事件元被告人、静岡市在住=ら3人が3月19日、国を相手取り東京地裁に国家賠償請求訴訟を提起した。
米軍立川飛行場の拡張に反対するいわゆる「砂川闘争」では、基地内に立ち入ったとして23人が逮捕され、7人が起訴されたが、前述の伊達判決によって全員が無罪に。しかし、翌年に日米安保条約の改定を控えていた日米両政府はこの判決の影響を危惧し、高裁を飛ばして最高裁に跳躍上告。差し戻された一審で有罪となった。
ところが、2008年以降、機密指定が解除された米国の公文書によって、田中長官と駐日米国大使とが59年当時「プライベート」で会い、最高裁での審理見通しなどを克明に伝えていたことが発覚。原告らは法を冒涜する行為として14年6月に東京地裁に再審請求したが、地裁、高裁に続き最高裁が18年7月18日、中身に踏み込むことなく訴えを棄却した。
提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見した原告訴訟代理人の武内更一弁護士は「(裁判情報漏洩という)論点の決着はついていない。国家が共同で隠蔽し、隠し通してきた責任は免れない」とし、13年に83歳で死去した父・坂田茂さんに代わり原告となった娘の和子さんは「裁判が公平でなかったことが明らかになった以上、せめて父の名誉回復を」と訴えた。土屋さんは米軍基地問題や地位協定、改憲など現在につながる一連の裁判を「とくに若い人たちに知ってもらいたい」と述べた。
(片岡伸行・記者、2019年3月29日号)