これが都教委強制の卒業式「所作」指示文書
「国旗に敬礼、君が代を高らかに斉唱」
永野厚男|2019年4月16日11:23AM
「壇上の国旗に役人が深々とロボットのように何度も礼をし、天皇賛美の歌を大声で歌った。異常です」。今年3月、東京23区内の都立高を卒業した生徒は式後、校門外で取材していた筆者に語った。
都民の情報開示請求に東京都教育委員会が3月28日、出してきた文書により、この全体主義的な所作の元凶が、明らかになった。
以下に示すのは、卒業式に挨拶文読み上げ名目で派遣する幹部職員に対して都教委が今年初めて手渡した「卒業式等における東京都教育委員会挨拶等の所作について」という文書だ。「国旗に正対し、声高らかに、国歌を斉唱してください」のほか、挨拶文のための登・降壇時だけで全部で8回の礼を指示。国旗に敬礼する役人が「尻を向け」るのは生徒・保護者。都教委は人間より1枚の旗のほうが大事だと考えているのか。“君が代”強制を強化する2003年の10・23通達をも超える内容だ。
もう1種開示の、ここ数年同内容の「卒業式等派遣者用マニュアル」は、「国歌斉唱(「国旗に正対してください)」と、前出の所作の文書に屋上屋を重ね、「当日の服装は略礼服・ダークスーツ等」との文言は作成時の削除ミスのせいか計3回も載せ、「2020東京オリンピック・パラリンピックのバッジ」着用は2回繰り返し、強制している。
石田周指導企画課長は小池百合子知事のサイン入り「お祝いのメッセージ」を副校長等が読み上げ、掲示もするよう通知。「来年は卒業式後すぐ知事選。事前運動になる」との都民の抗議に、担当者は「法的問題はない」と答えた。
管理統制型ではなく、生徒が主人公の式に転換させるには、授業で“君が代”など意見の分かれるテーマを扱う際に、政府見解に偏重せず多様な教え方が保障されるべきだ。
(永野厚男・教育ジャーナリスト、2019年4月5日号)