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NHKまで踊らされた
熊本地震「地盤リスク」説

明石昇二郎|2019年5月1日4:05PM

「データ捏造」疑惑勃発

そんな風評が吹き飛ばされたのは、Nスペの放送から半年が過ぎた17年9月のことだった。注目を集めた「本震」観測データに不自然な点があるとして、阪大・京大・産総研の研究チームが観測データの公表を取りやめたのだ。データの捏造が疑われていた。

問題のデータをまとめていた阪大の秦吉弥准教授はNスペにも出演しており、番組内で秦氏は、地震工学のスペシャリストで、機転を利かせて益城町内に臨時の地震計を3カ所に設置した「地盤リスク」説のキーパーソンとして紹介されていた。観測データの分析を担当していたのも秦氏である。

秦氏と研究チームを組んでいたメンバーの一人、京大防災研究所の後藤浩之准教授は、データに問題があることを全面的に認める「お詫び」を公表。さらに、もう一人のメンバーでNスペにも出演していた産総研の吉見雅行主任研究員も、データが不自然なものであることを認め、「己の未熟さを痛感しております」との反省を表明していた。

米地震学会の『Seismological Research Letters』2016年9-10月号表紙。秦氏がポータブル地震計を指している。撮影したのは16年4月15日の午後0時37分。「本震」発生時間は4月16日午前1時25分。ちなみに、「データマークJU210」の仕様書によれば、バッテリーを使用した場合の連続利用時間は約10時間となっている。

しかし、問題の論文が掲載された地震学会誌のホームページ(https://pubs.geoscienceworld.org/ssa/srl/article-abstract/87/5/1044/314142/preliminary-analysis-of-strong-ground-motions-in?redirectedFrom=fulltext)を見る限り、今後も風評を広めかねない論文の撤回は、本稿執筆時点(3月16日)でまだされていない。(編注:5月1日現在で確認したところ撤回されている)

秦氏が在籍する阪大では、観測データの捏造疑惑を受け、調査委員会を設置。本来であれば昨年の4月には、不正行為の有無やその詳細が明らかになるはずだった。が、そうはならなかった。昨年7月に筆者が阪大の研究推進部を取材した際、担当者はこう答えていた。

「調査中としかお答えできない。本学の規定上、調査期間は210日としているが、それを延長して、引き続き調査を行なっている。調査の途上での説明はご勘弁頂きたい。研究者個人の在籍確認にも応じていない。研究不正が確認された場合は公表する。不正がないということであれば、公表しないこともありうるかと思う」

まるで、世間が忘れてくれるのをひたすら待っているかのような対応である。

では、捏造が疑われている観測データとはどんなものなのか。全く当てにならない阪大をよそに、筆者は熊本へと飛んだ。

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