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NHKまで踊らされた
熊本地震「地盤リスク」説
明石昇二郎|2019年5月1日4:05PM
世紀の大発見となるはずだった熊本地震「本震」観測データに持ち上がった捏造疑惑。しかし、筆者の真の関心はそこにはなかった。この“大発見”のドサクサに紛れ、
“活断層は危なくない”
とする誤解が発生したことのほうが大問題だからだ。
当然のことながら、益城町の吉川さんもまた、Nスペをみていた。その上で、
「実感として、地盤リスク説は正しいと思う」
と言う。建物の壊れ具合や、被害が帯状に発生している現状からみて「地盤説が一番しっくりくる」のだそうだ。「揺れやすい表層地盤」の上に建っていた家屋が壊滅的な被害を受けていたのに対し、そうでない地盤の上にある家屋の中には無傷で済んでいたものもあったからである。
ただ、吉川さんは、
「活断層が動き、揺れを増幅する『表層地盤』も加わって、今回の被害に至った」
と考えていた。異存はなかった。
今回の取材を通じて浮かび上がってきたのは、
“活断層は大した問題ではない”
としたい勢力が一定程度、官僚や地震研究者の間に存在する――という事実だった。
では、迂闊にも疑惑の「本震」観測データを使い、“活断層は大した問題ではない”勢力の片棒を担ぐ格好で大特集番組を制作してしまったNHKは、どう責任を取るつもりなのか。NHKに聞いた。
「データが不自然であると指摘された際、全国ニュースでお伝えしました。また、ご指摘のNHKスペシャルについては、NHKオンデマンドの配信を取りやめています」(NHK広報局。昨年8月1日回答)
一方、阪大を所管する文部科学省はどうするのか。今年1月、秦氏が11年3月の東日本大震災の余震観測でも不正をしていた疑いがあると、共同通信が報じていた。この問題と合わせ、文科省としての責任をどのように感じているのか。同省の研究公正推進室に聞いた(今年2月8日)。
「まさに阪大で調査中だと聞いています。ずっと調査が続くということは、もちろんない。ただ、阪大の調査結果を待つ、ということしかできない」
――このまま、うやむやにされることはないのでしょうか?
「うやむやになることはあり得ない。学術研究への信頼が損なわれることは避けなければならない」