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NHKまで踊らされた
熊本地震「地盤リスク」説
明石昇二郎|2019年5月1日4:05PM
NHKはうやむやにするつもりなのか
そして今年3月15日、阪大が記者会見を開き、調査結果を公表した。調査委員会の設置から1年以上が経過していた。
阪大では、秦氏による熊本地震「本震」観測データが捏造だったと認定していた。本震の揺れを観測したとする生データが保存されておらず、地震計を固定するアンカーが使われた形跡もない、とのことだった。阪大では、米国の地震学会誌に掲載された論文についても、出版社や共著者に対して取り下げるよう検討を求めたとしていた。
驚かされたのは、「調査開始時点において元准教授(秦氏)は故人となっていた」(「調査結果概要」より。カッコ内は筆者の補足)という事実である。
秦氏は、捏造疑惑が浮上した直後の17年12月28日付で阪大を退職していた。阪大に調査委員会が設置され、調査を開始したのが翌18年の2月17日である。つまり、退職してから2カ月足らずの間に亡くなっていたというのだ。よくぞここまで隠し通したものである。阪大はこの日、秦氏の死因や時期を明らかにしなかったが、自死であることが強く疑われた。
さらに驚かされたのは、NHKのコメントである。阪大記者会見当日のニュースで、NHKは次のように述べていた。
「問題のデータ以外にも複数の専門家の研究や現地での調査をもとに取材、制作しており、番組やニュースでお伝えした結論に変わりはないと考えています」
うやむやにするつもりのようだ。ならば、NHKオンデマンドでの配信を取りやめているNスペの配信を、復活させてみるがいい。それほど「結論」に自信があるのなら、再放送も検討してみてはいかがだろう。同日のNHKニュースによれば、“活断層は大した問題ではない”勢力の本丸である国交省も、阪大が「捏造」と認定しようが同省の熊本地震分析結果に「影響はない」と拘泥し、NHKと足並みを揃えているのだという。
本来であれば、捏造論文を根拠としていたNスペ放送を撤回し、論文のどこが問題だったのかを検証しつつ、改めて熊本地震の被害を調べ直した訂正番組を放送するのが、報道機関としての筋の通し方だと思われる。検討を求めたい。
(あかし しょうじろう・ルポライター。2019年3月29日号)