もうひと仕事
小室等|2019年5月3日7:00AM
団塊世代とは、堺屋太一の小説『団塊の世代』に由来し、一九四七~四九年生まれを指すならば、四〇年生まれの上條恒彦と四三年生まれの小室は除外、五五年生まれの太田裕美と五七年生まれの尾崎亜美は団塊に遅れをとっているのでこれも除外、約一名、七一年生まれのこむろゆいは大きく除外となる。
いえね、除外と言ったけど、上條さんも小室も含めて団塊世代ですよ。焼け跡世代を引き継いで、この団塊の世代が戦後の日本を担って今にある。
目の奥に睥睨を隠した笑みを浮かべ、理を蹴散らして闊歩する輩が横行する国会議事堂のすぐそば、三月三日の日本武道館に目をやれば、満員の客席も団塊世代。みなさん、青春を懐かしみ満喫して帰られた。僕たちもしっかり歌った。
団塊の世代という年寄りたちが集まり、舞台客席混在の老老介護ライブでしたよ。
でね、僕は思うのですよ。
あの日、髪を切る前、同じ夢を見たはずのこの老々たちには、もうひと仕事残っていると。
高度成長期にロングヘアを短く切って世の趨勢になびき、強者の理は身に付けた老々たちが、今続々と定年を迎えてゆく。
ここは一肌脱いで、知りぬいた強者の手口を逆手に取り、弱者のために残された老後を生きるというひと仕事っていうの、どうでしょうか。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2019年3月22日号)