中国「一帯一路」構想の危うさ
浜矩子|2019年5月6日7:00AM
「スモール・イズ・ビューティフル」というフレーズについてはご承知の通りだ。いや、いまや、実はそうでもないかもしれない。念のために申し上げておけば、これは本のタイトルである。イギリスの経済学者、エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハーが1973年に発表し、一世を風靡した。
別段、この本をお読みくださいと言いたいわけではない。言いたいのは、スモールであることはビューティフルなだけではないということだ。小さいことは、美しいばかりではなく、正しくて平和的だ。今、つくづくそう思う。
この思いを筆者に抱かせているのが、中国の「一帯一路」構想である。中国本土を起点として、欧州にいたる21世紀版シルクロードを構築する。それを目指して、中国は大型のインフラ建設プロジェクトを地球各地で展開している。アジアで。アフリカで。東欧で。
そして、いまやEUの中心部に食い込んで、イタリアを「一帯一路」の枠組みの中に取り込もうとしている。イタリアも大いに乗り気だ。独仏主導型で欧州統合が深化していくことに反発しているからだ。
そうしたイタリアの思惑はひとまずさておき、そもそも、中国はなぜこのように自国の圏外に向かって政治経済的触手を伸ばそうとするのか。それは、中国という国が基本的に大き過ぎるからなのだと思う。