中国「一帯一路」構想の危うさ
浜矩子|2019年5月6日7:00AM
巨大な図体の一体性を保持していくためには、常に爆発的な経済成長のエネルギーを燃えたぎらせ続けなければならない。低成長経済化してしまえば、中国は求心力を失う。一党独裁型政治への人々の憤懣や、反発を抑え込むことができなくなる。
大き過ぎて維持不能。そうならないために、巨大なものは常により巨大になることを追求する。この追求を止められない。何とも怖いことだ。中国が一つの国ではなかったら、こんなことにはならない。小さな国々がそれぞれに独立を堅持しながら連帯しているのであれば、いたって円満に繁栄を共有することができるはずである。
小さきものたちは、誰も独りでは生きていけないことをよく知っている。だから助け合う。だから平和裏に共存できる。
ロシアも、大き過ぎるから、さらに大きくなることを追求しようとしてしまう。かつてのソ連邦だったころの大きさを何とか取り戻そうとする。いや、むしろ、帝国ロシア時代の大きさを再び手に入れようとしているようにみえる。
小さきものたちは、肩の寄せ合い方を知っている。大きすぎるものたちは、誰とも肩を寄せ合うことができない。
大きすぎる図体を持て余す国々は、どんどんゆとりを失い、包容力と縁遠い世界に踏み込んでいってしまう。一帯一路構想を通じて、中国はグローバルな経済社会をどこまで呑み込んでしまえば安心できるのだろう。
大きくなり過ぎたものたちは、むしろ、思い切って小さくなる方向に舵を切り替えたらいいと思う。中国もロシアも、実はさまざまな民族の寄り合い所帯だ。それぞれの民族に自決を認めて、数多くのスモールでビューティフルなものたちの集合体に変身すればいい。そうすれば、きっと平和を引き寄せることができる。
(はま のりこ・エコノミスト。2019年3月29日号)