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「近畿リハビリテーション学院」パワハラ訴訟は和解成立
厚労省はガイドライン改定へ
村上恭介|2019年5月15日10:26AM
【裁判後、運動が実り実習時間を厳格化】
この裁判は遺族の働きかけで国会でも取り上げられ、理学療法士養成の実習ガイドラインが大幅に改定されるきっかけとなった。
その柱の一つが臨床実習の作業時間を厳格化したことだ。厚生労働省が20年前に定めた指導要領は、実習時間を1単位(1週)おおむね45時間としているが、自殺した大野さんはこれを大きく超える約70時間に及び、一審判決は「質的・量的に過重であるのに、指導役が改善を怠ったのは違法」と認定した。ところが、厚労省が17年にアンケート調査したところ、75%以上の学生が「実習中は毎日自宅に課題を持ち帰っていた」と答え、それに費やす時間も大半が「3時間以上」に達していた。徒弟的な環境の下、指導役の理学療法士が学生に無理難題を押しつけ、過重な実習が蔓延しているためだ。
厚労省はこうした実態を改めるため、一審判決後の昨年10月、ガイドラインの「45時間」について「40時間以上の実習で構成し、実習以外の学修等がある場合にはそれを含め45時間以内」とするよう各知事に通達した。佳奈子さんらが厚労省に求めていた「1単位45
時間の厳守」が反映された内容だ。さらに厚労省は、実習指導にあたる理学療法士についても免許取得後5年以上(従来は3年以上)の実務経験を必要とし、指定の講習を修了することなどを新たな条件に定めた。
業界団体である公益社団法人・日本理学療法士協会は一審の判例を受けて昨年9月、今後の臨床実習については実習時間内に課題を完結させることを会員に求める声明を発表した。これらの動きが影響し、大野裁判のホームページには「週45時間を上回る実習を謝罪・撤回させた」などの報告が学生たちから続いている。
提訴から4年5カ月、遺族の運動は大野さんの無念の一端を晴らすとともに、臨床実習の現状を大きく転換させたことになる。
(村上恭介・ジャーナリスト、2019年4月26日号)