景気減速、日銀は追加金融緩和に踏み切るのか
鷲尾香一|2019年5月15日12:00PM
しかし、黒田総裁が打ち上げた「異次元緩和」により、「消費者物価指数を2年で2%にする」という目標の達成が不可能となり、日銀は国債買入れ額を減少させるようになった。いわゆるステルス・テーパリング(密かに量的金融緩和を縮小すること)に踏み切ったのだ。
背景には、世界景気が回復したことで、米国が金融緩和を終了し、金融政策の正常化(利上げ)を進めていることに加え、EU(欧州連合)も金融政策の正常化へのプロセスに進んでいるなど、世界の金融緩和政策が終焉を迎えているにもかかわらず、日銀だけが金融緩和政策の終了のメドが立たずにいることがある。
だが、ここにきて、米中の貿易摩擦に端を発し、世界景気に陰りが見え始めている。国内景気も日銀の3月全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がプラス12と前回の18年12月調査から7ポイントも悪化するなど、景況感の悪化が目立ち始めている。
こうした景況感の悪化を受け、市場では日銀に対する追加金融緩和への期待が高まってきている。しかし、国債買入れ額の減額に踏み出した日銀にとって、再び国債買入れ額を増額するのは“屈辱”だろう。
景気の減速が危ぶまれた時、日銀はどのような追加金融緩和策を行なってくるのか。「令和」の始まりは、日銀の“正念場”の始まりともなりそうだ。
(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2019年4月12日号)