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政官が癒着する「悪夢」の安倍政権

佐藤甲一|2019年5月15日5:00PM

 それまで自治体が捻出していた下関北九州道路の調査費を国が持つということは、国が建設に向けてゴーサインを出したことを意味する。要望の場面は予算の閣議決定前日でもあることからマスコミにも公開された。

そこでは塚田副大臣は「前向きに検討」と返事をした。霞が関の役所取材に慣れた記者が「前向き検討」と聞けば、「今はやらない」と同義語であるとピンとくる。長らく事業凍結されていた安倍首相、麻生太郎財務大臣の地元の道路建設事業を参議院の実力者の要望で「はい、そうですか」と認めれば、すぐに騒ぎになる。だから「前向き検討」にとどめた。

だがメディアの冒頭取材が終わると、一転場面は生々しく変貌する。担当局長が「必要性ははっきりしている」と受け、吉田氏が「いつ対外的に言えるか」と念を押すと担当局長は「年度末」と答えている。すでにこの段階で国による調査を担当局長が認め、3月末前公表は控えてほしい、と語っている。

「年度末」とは19年度予算が成立してからと同義語だ。つまりは予算審議の間はこのことは伏せておき、予算が成立し野党やマスコミの注意が散漫になったら、地元などへ公表してもかまわない、と述べているわけだ。おそらくは19年度予算の中には明確な「個所付け」はなく、国交省の裁量の範囲の中で、別の道路事業費から調査費を配分しなおし、捻出するというテクニックだろう。

そのことを裏付けるように翌21日には、山口、福岡の両県知事が自民党や国交省を回って要望を繰り返した。21日は予算の閣議決定の日、この日に要望してもなんの効果もない。そうではなく、前日に漏らされた国事業への格上げに対する「お礼参り」ではなかったか。実際、地元の有力紙はこの問題の検証記事で、この時石井啓一国交大臣から「決定を伝えられた」と報じているのだ。

民主党政治を「悪夢」と断じた安倍政権の下で、昭和の金権政治を再現するかのような政官癒着の構図が堂々と存在していることこそ、国民は怒るべきだろう。

(さとう こういち・ジャーナリスト。2019年4月19日号)

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