京大の規制に「人間タテカン」で抗議
「表現の自由は撤去できない」
土岐直彦|2019年5月16日11:25AM
京都大学(京都市左京区)が本部キャンパス周辺での立て看板(タテカン)設置を規制してから1年になるのを前に、市民や学生約50人が4月15日、正門前で「人間タテカン」の列を作って復活を求めた。「ならば自分たちが『タテカン』に」と、訴えを札にして掲げたのだ。
企画したのは「WE ARE タテカン実行委員会」。京大教育学研究科の大学院生で、「立て看文化を愛する市民の会」メンバーでもある西郷南海子さん(31歳)らが中心となって「現状打開へ今一度、問題提起を」と、市民や京大生・京大教員に呼びかけた。
この日の午後、参加者はそれぞれ一人ひとりが持つ札で「表現の自由は撤去できない」と「人間の鎖」を作った。マイクを握った市民は「タテカンは街の景観だった」「学生たちの活動の息遣いを表していた」と規制を批判。京大生の一人は「新入生はタテカンのことをもう知らない。復活へ応援を」と呼びかけた。本来ならばこの時期はサークル勧誘などのタテカンが最も多く並んでいたはずだ。
京大は昨年5月、キャンパス外壁へのタテカンの設置が、景観に関する京都市の条例に反するとして設置を禁止。これに抗う学生らが批判的な工夫を凝らしたタテカンを設置し、その度に撤去が繰り返された。多くのグループの見直し申し入れも無視されてきた。
今年2月までに、計276枚のタテカンが撤去されたという。
西郷さんは「タテカンがずらりと並んだ石垣を見れば、京大でいろいろな活動が行なわれていることが一目瞭然。タテカンはとにかくごちゃごちゃしていて、価値観も一枚一枚ばらばら。そんな学生のエネルギーが大学の外へと放たれ、その前を歩く人々とを結びつけてきた」と、タテカンのある光景について話す。
(土岐直彦・ジャーナリスト、2019年4月26日号)