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農薬散布で体調悪化
マンション住民が名古屋地裁に中止申し立て
岡田幹治|2019年5月17日12:06PM
名古屋市のマンションに住むAさんが4月16日、管理会社の三菱地所コミュニティ(東京都千代田区)と管理組合に対し、植栽への農薬の定期散布を中止するよう命じてほしいと名古屋地裁に申し立てた。
Aさんは2016年、職場の空気汚染によってシックハウス症候群になり、18年1月からは休職して自宅で療養中だ。マンションの管理会社は管理組合の決定に基づき、毎年5月や7月に農薬を散布しているが、Aさんは発症後、散布のたびに体調が悪化するようになり、18年10月には化学物質過敏症との診断も受けた。
マンション3階にあるAさんの部屋の北側、バルコニーの前は斜面状の土地になっており、草木が植栽されている。そこに散布された農薬の成分(ネオニコチノイド系殺虫剤のアセタミプリドなど)が、何カ月間も部屋周辺に漂うのだ。このためAさんは何度も散布の中止を求めたが、聞き入れてもらえない。
管理会社は次の農薬散布を5月9日に実施する予定だ。実施されれば、Aさんの体調は悪化して療養の妨げになり、職場復帰も困難になるのは、ほぼ確実だ。
農薬から逃れるには長期間にわたって自宅から避難する方法もあるが、それを行なうには多額の費用がかかる。そこで、人格権に基づいて農薬散布の仮の差し止めを求めたものだ。
住宅地での農薬の使用については、農林水産・環境両省の局長による通達で、定期的な散布はやめ、被害が発生したときは枝の剪定や機械除草など物理的防除に最大限努めることとされている。ただこれは努力義務であり、罰則がないため、あまり守られていない。
このマンションの場合も名古屋市緑政土木局都市農業課の担当者が指導したが、管理会社は「法律違反はしていない。行政が立ち入る話ではない」などとして従わなかった。
(岡田幹治・ジャーナリスト、2019年4月26日号)