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新元号狂騒を批判する
宇都宮健児|2019年5月18日7:00AM
天皇制の歴史を見てみると、初代の神武天皇から現在の天皇は125代目となっている。元号は最初の元号である「大化」から南北朝時代の両朝を合算した場合は平成まで247個、同時代を南朝のみで数えた場合は平成まで231個となる。
明治以前は天皇一代で複数の元号が定められることが多かったのであるが、明治になって制定された旧「皇室典範」により天皇一代に一つの元号と定められた。
明治時代の皇室典範で定められた元号制度は天皇の権威と深く結びついたものであったので、戦後の新憲法下で改正された皇室典範では、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指導により元号に関する規定は削除されている。
しかしながら、新しい皇室典範で削除された元号制度は、保守グループが元号法制化を求める運動を行ない、1979年に「元号法」が制定されたことにより、元号制度が復活し、現在に至っているわけである。
明治時代に制定された「大日本帝国憲法」下では天皇が主権者であったが、戦後制定された「日本国憲法」では国民が主権者となり、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」とされ、天皇は実質的な権力を持たない「象徴天皇」と規定された。
皇帝が時を支配するという思想や、元号を使うことは皇帝の支配に人々が服従し従属することを意味する元号制度は、日本国憲法の国民主権の精神とは矛盾するものである。
今回の新元号狂騒を見ると、元号制度についての批判的な検討がほとんど行なわれていない。
元号制度が生まれた中国においては、現在では元号制度は廃止されている。
(うつのみや けんじ・弁護士、2019年4月19日号)