安倍政権が支持される驚くべき理由
浜矩子|2019年5月19日7:00AM
1人の質問者から、概略、次の通りの質問を頂戴した。「講師の安倍政権批判はよく解る。だが、本日の話はむしろ野党政治家たちに聞かせてほしい。彼らが、安倍政権による政策の軌道修正につながるような提案ができるよう、方向付けしてやっていただきたい」こう力説された後、質問者は次のように続けた。
「ここにいるのは皆、中小企業経営者だ。つまり保守派である。政権交代を望んでなどいない。政策がまともになってさえくれればそれでいい。講師も、結局は同じですよね?」
講師は、決してそうではない。この政権が退場しなければ、政策は絶対にまともにはならないと確信している。だから、そう申し上げた。そこは見解の相違ということで円満に終わった。
だが、それはそれとして、この質問者の発言は実に示唆的だ。それを裏打ちしている論理の脈絡は、次の通りだ。
まず出発点として、中小企業経営者である以上、保守派でなければいけないという認識がある。保守政治を守り抜くことは必須。それが大前提となっている。だが、安倍政権の主張や姿勢には、どうも危うさを感じる。それは否定できない。だが、この安倍政権の危うさが政権交代を招いてしまうのは、絶対的にまずい。
だから、安倍政権に何とかまともな保守政権らしくなってほしい。そうなるまで、支持を止めるわけにはいかない。
この論法でいくと、どうなるか。それは、安倍政権を巡って失策や醜聞、傲岸不遜や傍若無人が明らかになればなるほど、より強くこの政権を支持しなければならないという行動論理につながっていく。
世論が総じて安倍政権から離反しそうになればなるほど、自分たちが頑張ってサポートしなければならない。それが保守派たる中小企業経営者の使命だ。そういう思い込みが募る。こうした皆さんの必死の思いにつけ込んで、支持率を積み上げている。それが安倍政権だ。ますます、許し難い。
(はま のりこ・エコノミスト。2019年4月26日号)