宇佐神宮解雇裁判一審判決が確定
問題の“根っこ”は神社本庁
2019年5月24日11:52AM
一審判決では、到津家の住居を「単なる住居ではなく、儀式や祭礼をする場所」とし、宇佐神宮側の立ち退き請求を退けていた。
この判決確定の直後、宇佐神宮側は到津さんが料金を支払っていた電気、ガスなどのライフラインを一方的に解約。4月10日付で九州電力から到津さんの元に「送電停止のお知らせ」が届いた。さらに宇佐神宮側は本殿裏手につながる到津家住居前の歩道の一般車両の通行を禁止する通知を地元に回覧するなど、到津さんへの嫌がらせとも受け取られる事態が続いているという。
【“根っこ”は神社本庁】
到津さんを支援してきた「宇佐神宮の伝統を守る会」では今年1月、神社本庁のトップである鷹司尚武統理宛に「嘆願書」を送り、宇佐神宮の混乱収拾に力添えを求めたが、鷹司統理からはなんの反応もなかったという。到津さんと鷹司統理とは縁戚関係にあるため、「鷹司統理自身、神社本庁内部では田中恒清総長と対立関係にあるようなので、口を出しにくい立場なのかもしれない」と見る向きもある。
「伝統を守る会」では、「今後も到津さんへの嫌がらせは続くだろうが、境内敷地内に“拠点”は残る」とし、到津さんも「引き続き、宇佐神宮の正常化をめざしていく」と話している。
一方、田中総長の意向を受けて神社本庁総務部長から16年2月に宇佐神宮の宮司に就任した小野崇之氏と地元との関係も悪化している。この間、宇佐神宮の氏子有志らによる「宇佐神宮を守る会」が小野宮司らの退任を求める署名を提出。元責任役員の1人は「宇佐神宮問題の根っこは神社本庁問題」として、こう言う。
「到津家排除の動きは単なる一神社の宮司問題ではありません。神社本庁は外では現政権と一体化して改憲運動の先頭に立ち、内ではあからさまな中央支配を進めようとしている。この動きは別々のものではなく、戦前の国家神道の時代への回帰を狙ったものです」
解雇裁判は終結したが、問題は根深く、解決には程遠い。
(片岡伸行・記者、2019年5月10日号)