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【スクープ】死因不明の“福島病”を生み出してはならない
「急性心筋梗塞ワースト1」で福島県が放った奇策
明石昇二郎|2019年5月25日4:56PM
県民の自己責任なのか
最後にもう一つ、気になる点を指摘しておく。
「独自調査」報告書では「心筋梗塞の危険因子」として、同県民にはメタボリックシンドロームに該当する者が多いことや、高血圧や糖尿病患者が多いこと、そして喫煙率が高いことを挙げている。その一方で同報告書は、心筋梗塞をはじめとした心疾患への影響が指摘されている放射性セシウムとの関連を、一切検証していない。「ワースト1」はあくまで県民の自己責任の結果――としたいようなのだ。
人が体内に放射性セシウムを取り込んだ場合、血液中よりも心臓の筋肉のほうが、放射性セシウムの濃度が高くなることが知られている。また、電離放射線が心疾患のリスクを上昇させる可能性があることは、国際放射線防護委員会(ICRP)でも認めている。
福島県は県土の広範囲が、福島第一原発事故によって高濃度の放射性セシウムをはじめとした放射能で汚染された。しかも記事の冒頭で紹介したとおり、同原発事故以降、福島県の急性心筋梗塞の年齢調整死亡率は2年にわたって急増している。
しかし「独自調査」報告書は、こうした事実を完全に無視している。
頭ごなしに「あり得ない」と決め付けてかかるのではなく、放射性セシウム汚染も「危険因子」になりうるかもしれないというニュートラルな姿勢で「急性心筋梗塞による死亡率の改善策を検討する」のが、道理(物事の正しい筋道)だろう。
(あかし しょうじろう・ルポライター。2019年5月10日号)