日本は自動車危険大国
高橋伸彰|2019年5月26日7:00AM
平日の白昼、東京の都心で87歳の高齢者が運転する乗用車が暴走し、次々と人をはねて10人が死傷した。亡くなったのは青信号の横断歩道を自転車で移動していた30代の母親と3歳の女児。当初はアクセルが戻らなかったという運転者の証言もあったが、その後の調べで自動車の機器に異常はなく、運転操作の誤りが事故の原因と見られている。
高齢になれば身体機能や判断力が低下し、事故を引き起こすリスクは高まる。その意味で高齢者の免許更新に際しては厳しい条件を課し、免許証の返納も含めて未然に事故を防止する対応に異論はない。また、犠牲者の無念や遺族の悲しみに思いを馳せるなら、加害者に相当の法的な制裁を科すのも法治国家としては当然だろう。
ただ、事故が起きるたびに当事者の責任を追及するだけでは、歩行者や自転車乗用者といった交通弱者を悲惨な事故から守ることはできない。実際、日本では交通事故死亡者に占める歩行者および自転車乗用者の割合は50.2%(警察庁調べ、以下同じ)と、欧州諸国の同20~30%と比較して倍近くに達している。
交通事故による死者数は平成元年(1989年)の11086人に比し咋年(2018年)は3532人と30年近くの間に約3分の1に減少したが、死者に占める交通弱者の割合はむしろ上昇しているのである。