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天皇代替わりで児童・生徒に「令和」教育、文科省が祝意を“強制”
永野厚男|2019年6月3日10:26AM
「5月1日に部活で登校すると、ポールに大きな国旗が揚がっていた。ふだん休日は来ない校長を見たので、校長が揚げたのでは」
“天皇代替わり連休”中、ある東京都立高校の生徒に取材すると、そんな言葉が返ってきた。
連休後の5月7日、沖縄県那覇市立のある小学校では、体育館での朝礼で校長が「令和」と大きくマジックで書き、横に赤で振り仮名を付けたカードを手に、元号が変わったと講話。5年生の総合学習の授業で「令和の出典は日本の万葉集。意味=あしたへの希望を持ち、一人一人が大きな花を咲かせ」と黒板に板書後、児童らに一斉に読ませ、女性教諭が「という思いを込めて付けた名前だそうです」と説明した。
これら過剰な対応の元凶は文部科学省の永山賀久初等中等教育局長が4月22日、全国の都道府県教育委員会教育長等に出した通知「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における児童生徒への指導について」で、主な内容は以下の2点だ。
(1)「4月2日付で御即位当日における祝意奉表について閣議決定が行われ、皇太子殿下の御即位当日の学校における祝意奉表について同日付『御即位当日における祝意奉表について(通知)』(略)で文部科学事務次官から通知したところです」とある。なお、右の文科事務次官(藤原誠氏)通知では「(5月1日に)学校、会社、その他一般においても、国旗を掲揚するよう協力方を要望すること」との閣議決定を添付。
(2)「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を引用したうえで「各学校においては、あらかじめ適宜な方法により、本特例法に基づく天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位について(略)国民こぞって祝意を表する意義について、児童生徒に理解させるようにすることが適当と思われますので(略)御配慮願います」としている。
【天皇敬愛教育を要求する赤池・元文科大臣政務官】
関東地方のある教育委員会の担当者は、筆者の取材に「文科省通知が来たので学校に周知したが、『天皇を敬え』等、思想的な教育を求めるつもりはない。連休前後は交通事故に遭わないよう安全教育が一番大事」「文科省から各学校に調査する指示はなく、各学校に調査はしない」と語った。前出の那覇市の小学校も、「天皇」には一切触れなかった。
だが、大多数の教委や校長が購読している週刊の『日本教育新聞』4月22日号は、「新元号『令和』をテーマに」「校長経験者5人に講話例を作ってもらった」とし、岩瀬正司・元全日本中学校長会長(元都教委主任指導主事)の「今上天皇の『平和への願い』振り返る」との講話例を掲載。これに触発される校長が出る可能性はある。
安倍晋三首相側近の自民党・赤池誠章参議院議員(57歳・元文部科学大臣政務官)は5月2日、「学校において御代替わりをどう教えるか『理解と敬愛』」と題し、学校教育への介入を強める次の主張を、自身のブログに載せた。
〈私共は、昨年来から(略)学校において、御代替わりのことをしっかり教えるべきであると文部科学省に求めてきました。教育基本法にある通り(略)「伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛する」ことに繋がるからです〉
〈(「天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること」とする小学校学習指導要領を「中学校」と誤記し引用後)その内容を、小中高の発達段階に応じて、分かりやすく教えることができるような具体的な対応を文部科学省に要望してきたいたのです〉
〈4月中に学校において、教えることができたのでしょうか。(略)126代目の天皇陛下の御即位と248番目の改元を受け、私が部会長を務める自民党文部科学部会として、子供たちへの指導内容について、検討したいと思っています〉
来年2月の新天皇誕生日までのスパンの中、保守系政治家や文科省官僚の動向への監視が必要だ。
(永野厚男・教育ジャーナリスト、2019年5月17日号)