「大学無償化法」はまやかし
鷲尾香一|2019年6月3日7:00AM
そして、財源には10月に予定されている消費税率10%への引上げによる増収分の一部を使う。筆者は、本誌5月10日号の消費税5%以下への減税に関する拙稿で、消費税の利用目的を見直すべきだと主張した(詳細は拙稿をご参照ください)。それは、消費税が安倍政権の思惑により、創設時の目的を何度も捻じ曲げられ、塗り替えられているからだ。
創設時の目的である「高齢化に向けた安定的な財源の確保」は「社会保障改革と財政健全化の同時達成」となり、さらに、「社会保障の充実」へと変節し、その対象分野は「年金、医療、介護」の3分野から「少子化対策・子育て」を加えた4分野となった。
そして、2017年12月の「新しい経済政策パッケージ」では、少子化対策・子育て支援策の「幼児教育の無償化」とともに、「私立高校の授業料の実質無償化」と「高等教育の無償化」を滑り込ませた。これにより、少子化対策・子育て支援策として大学無償化に消費税を使うことは、いわば合法化されたのだ。
しかし、「私立高校の授業料の実質無償化」や「高等教育の無償化」といった問題は本来、少子化対策・子育て支援策とは切り離して、教育制度のあり方として議論し、きちんと制度設計するべきではないだろうか。
(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2019年5月17日号)