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生活保護から「生活保障」へ
「権利」としての法制化を日弁連が提起
片岡伸行|2019年6月4日1:03PM
先進諸国の中で最低レベルにあるとされる日本の生活保護制度だが、法律(生活保護法)の名称や仕組みを変え、権利性が明確な「生活保障法」の制定をめざす日本弁護士連合会(日弁連)主催の集会が5月15日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開かれた。
生活保護利用者は現在、約210万人(約163万5000世帯)いるが、それは本来受け取る権利のある人の15%か16%。多く見積もって2割程度だとされる。欧米ではその捕捉率が50%以上あり、ドイツは70%以上、英国は80%を超えているという。その名称も「連帯所得」(フランス)、「基礎生活保障」(韓国)などで、国から恩恵や施しを受けているような印象を与える「保護」の語を使用している国はないとされる。
しかも、安倍政権になって生活保護費の切り下げが続く。2013年、14年、15年に続き、18年10月から3年間かけて生活保護費が段階的に引き下げられる。「人間の尊厳と命を削るものだ」として全国で訴訟が提起されている。
日弁連は08年に生活保護法の改正要綱案をまとめ、今回これを11年ぶりに改定。集会では改定版の内容を日弁連の貧困問題対策本部事務局次長・森弘典弁護士が説明。名称を「生活保障法」に変更し、行政側の「水際作戦」を不可能にする制度的保障を設け、ケースワーカー1人当たりの担当世帯数を削減するなどといった改定のポイントをアピールした。
大阪市立大学大学院准教授の五石敬路さんは、かつては日本と同じ「生活保護法」だった韓国の「国民基礎生活保障法」における受給漏れをなくす取り組みを紹介。立命館大学准教授でケースワーカーの実務経験がある桜井啓太さんは日本のケースワーカーの実情と改革の必要性について報告した。
集会には複数の野党国会議員も駆けつけ、“排除と切り捨て”の政治を変える必要性を訴えた。
(片岡伸行・記者、2019年5月24日号)