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強まる「解散風」を読む
佐藤甲一|2019年6月8日7:00AM
まず国内経済の悪化を受け、状況判断を先延ばしするため6月26日に会期末を迎える通常国会を一旦延長する。その週末に行なわれるG20の場では、世界経済に関する危機感を国際社会で共有する。議長は安倍首相本人なのだから、とりまとめは比較的容易だろう。国際社会の認知を受けたのち、最後の指標として6月の経済動向を示す日銀短観が7月1日に発表される。ここで厳しい判断が示されれば、消費増税の凍結を決定し、「凍結法案」を成立させる。
衆参両院で圧倒的多数を占める与党だから両院あわせて4日もあれば成立は可能だ。一方、野党は消費増税の凍結は賛成ではあるが、同時にアベノミクスの失敗の責任を問う形で内閣不信任案を提出するだろう。先に触れた菅長官の言葉通り、衆院解散となる。「凍結法案」の成立次第だが、週末の7月5日に解散すれば8月4日に衆参同日(W)選挙、の可能性が浮上する。
ただ気になるのは、5月に入って安倍首相が「憲法改正」に再び意欲を見せていることだ。任期満了まで務めれば9年の長期政権となるが、佐藤栄作氏の沖縄返還、田中角栄氏の日中国交回復といった歴史に残る政治的な成果は何ひとつ残していない。北方領土返還の皮算用も泡と消えかかる今、改めて憲法改正に「回帰」してきたともいえる。
だが、国会発議に必要な衆議院の310議席をはるかに上回る325議席を自民・公明と維新、希望で持っている状況を自らの手で解消する必要があるのかどうか。参議院選挙で現有議席を減らせば、参議院の改憲勢力3分の2には届かず、「相乗効果」を狙って同日選というのもわからないではないが、リスクの方が高すぎる。同日選の風を吹かせておいて、衆参W選挙に反対する公明の意見を尊重して取りやめ、恩を売っておいて憲法改正で譲歩を迫る、という政権のシナリオとみるのはうがちすぎか。
(さとう こういち・ジャーナリスト。2019年5月24日号)