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沖縄の人々は毒入りの水道水を飲まされている
阿部岳|2019年6月10日12:20PM
有機フッ素化合物による健康被害の基準値は、日本にはない。米環境保護庁は飲料水として飲み続けても影響がないとする生涯健康勧告値を、1リットル当たり70ナノグラムに定める。さらに厳しく規制する州もある。
沖縄県は2016年、県内最大の北谷浄水場で浄水処理した後の水が1リットル当たり最大80ナノグラムと米国の勧告値を上回っていたと発表した。有害な水道水が県都那覇市など7市町村に供給され、飲まれていた。嘉手納基地周辺にある水源地では、勧告値の20倍近い汚染が確認された。
普天間飛行場周辺の宜野湾市でも、湧き水や地下水で同程度の汚染が分かっている。宜野湾市は水道水もすべて北谷浄水場から供給を受けている。京都大学医学部が市民の血中濃度を調べたところ、PFOSの代替物質PFHxS(ピーエフヘクスエス)が全国平均の53倍の高濃度で検出されたことが5月に明らかになった。
PFHxSの規制はまだ検討段階にある。だが、PFOSなどと同様の健康リスクが指摘されている。ついに、有機フッ素化合物の住民の体への蓄積が証明されてしまった。
沖縄県が水道水汚染を発表してからもう3年がたつ。国会で追及を受けた原田義昭環境相は5月、「3年間置き去りになっていたのは少し問題」と認めざるを得なかった。
前出のミッチェル氏は有機フッ素化合物汚染をベトナム戦争期の枯れ葉剤になぞらえて「21世紀のエージェント・オレンジ」と表現する。沖縄の土地は米軍がまき、流出させた枯れ葉剤に汚染されてきた。子ども用サッカー場の地下から猛毒成分入りのドラム缶が掘り起こされたこともあった。
これは思想信条の問題ではない。どこの政党を支持していようとも、日米安保に賛成であろうと反対であろうと、毒水や子どもを危険にさらす枯れ葉剤成分は受け入れられない。沖縄では、基地問題は命の問題である。
(あべ たかし・『沖縄タイムス』記者。2019年5月31日号)