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差別発言の長谷川豊氏への糾弾を 
維新は参院選公認停止

小林健治|2019年6月13日12:23PM

【被差別者と犯罪を結びつける根底に潜む観念こそ問題】

しかし、問題の核心は、虚偽を騙っただけではなく、江戸の賤民に仮託しながら、被差別者と犯罪を結びつけたところにある。

今日の被差別部落民は、穢多・非人など江戸時代の賤民と直結するものではない。しかし、現代の部落民を穢多・非人など賤民の末裔と、血筋論で考えている世人が多いのも事実であり、現実には長谷川氏の発言は部落出身者を直撃する。

部落差別は、江戸時代の賤民を手掛かりに土地を媒介としつつ、明治維新以降の資本主義体制の中で新たに再編・構築された近代的差別である。封建時代の差別は「身分」にもとづいているが、近現代の差別は〈生産性〉が根本にある(自民党・杉田水脈議員のLGBT差別)。

問われているのは、被差別部落や在日コリアン、精神障がい者など、被差別マイノリティと犯罪、とくに動機不明の猟奇的事件とを安易に結びつける思考に潜む差別観念なのだ(オウム事件や神戸連続児童殺傷事件の報道が典型的)。

今回の差別事件を部落解放同盟中央本部が抗議しているが、抗議文からは、この話が事実であれば抗議しないとも受け取れる内容だ。問題の所在は、「事実かどうか」にあるのではない。

事実か否かとは関係なく、犯罪や否定的な事件・事象・事柄と被差別マイノリティを結び付ける、その意識・発想・行為そのものが差別なのである。さらに、抗議文が長谷川氏個人でなく、なぜ日本維新の会あてなのか。参議院選の公認候補取り消し要求は、二義的で副次的な問題である。長谷川氏は急遽謝罪したが、それは公認取り消しを避けるためのポーズにすぎない。直接糾弾しない限り、長谷川氏の差別意識を糺すことはできない。

そうでなければ「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担させよ! 無理だと泣くならそのまま殺せ!」と叫ぶ長谷川氏を、免罪することになるだろう。

(小林健治・にんげん出版代表、2019年5月31日号)

 

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