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櫻井よしこ氏らが映画『主戦場』上映差し止め要求 
デザキ監督「承諾得た」

文聖姫|2019年6月20日10:04AM

会見する映画『主戦場』のミキ・デザキ監督(左)。(撮影/文聖姫)

日本軍「慰安婦」問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『主戦場』をめぐり出演者の一部が「だまされた」と記者会見。ミキ・デザキ監督は“事前に承諾、合意を文書で得ている”と会見を開いた。くしくも『主戦場』と同じで、どちらに根拠があるのかは主張を比べれば明らかだろう。

5月30日に東京都内で記者会見したのは「新しい歴史教科書をつくる会」副会長の藤岡信勝氏、「なでしこアクション」代表の山本優美子氏、「テキサス親父日本事務局」事務局長・藤木俊一氏の保守系論客3人。「だまされた」として声明を発表し、映画の上映差し止め、プログラムやポスターからの名前や顔写真の削除などを求めた。会見場では、やはり映画に出演した弁護士・タレントのケント・ギルバート氏と「テキサス親父」こと、トニー・マラーノ氏が寄せたビデオメッセージも紹介された。声明には他にも、映画に出演したジャーナリストの櫻井よしこ氏、ケント氏ら7人が名を連ねている。

映画は、日系米国人のミキ・デザキ監督が日・米・韓の30人以上にインタビューし、人数や強制連行の有無など「慰安婦」問題をめぐる論点に関する主張を淡々と紹介していく。「フェアであることが大事」(デザキ氏)という立場から、「慰安婦」問題否定派と肯定派の双方の議論を公平に見せる形になっているが、見ていくうちにどちらの主張に根拠があるのかが明らかになっていく構成となっている。

昨年10月、第23回釜山国際映画祭で初めて上映され、日本では4月20日から東京・渋谷で公開。映画は話題を集め、全国各地で順次公開されている。

【学術研究だから応じたと主張 映画のスタンスへの批判も】

声明文を読み上げた藤岡氏は、声明参加者と衆議院議員の杉田水脈氏ら否定派8人がインタビューに応じたのは、デザキ監督が映画について上智大学大学院修士課程を修了するために「卒業制作」として大学側に提出するものだと説明したからだと述べた。「学術研究」だから承諾したという主張だ。

また、『主戦場』は「商業映画」だとして、このような商業映画に出演することを8人は承諾していないと強調し、「許可なく他人の映像や発言を営利目的に利用した、道義的に決して許されない行為」だと指摘。撮影時に結ばれた合意事項を破った債務不履行、肖像権侵害、名誉毀損などにあたるとも主張し、デザキ監督と関係者の責任を「法的手段も含め徹底的に追及する」と述べた。

さらに、映画が「学術研究とは縁もゆかりもないプロパガンダ映画」だと指摘しているが、その根拠の一つに挙げているのが、8人を「リビジョニスト(歴史修正主義者)」、「ライトウィンガー(右翼)」、「ナショナリスト」、「歴史否定論者」、「性差別主義者」とレッテル貼りをしている点だ。しかし、映画にはこのように言われても仕方がないと思われる発言も登場する。たとえば藤木氏は、「フェミニズムを始めたのは不細工な人たちなんですよ」などと映画のなかで発言しているが、こうした発言内容について「改める必要があるのか」と記者会見で質問された藤木氏は、「言い続けてきていることで改める必要もない」と答えた。

藤岡氏らは、デザキ氏の出身校である上智大学の責任についても言及した。さらに、デザキ氏の指導教官が中野晃一・上智大学教授であるとして、「今後その関与の状況と責任を明らかにしていく」とも述べている。

一方、デザキ氏と『主戦場』配給会社の東風は6月3日、東京都内で記者会見した。デザキ氏は、出演者が「撮影、収録した映像、写真、音声などを私が自由に編集して利用することに合意する合意書、承諾書に署名した」と指摘した。藤岡氏ら2人については、公開前の確認を求めたため、昨年5月と9月に本人の発言部分の映像を送ったという。その後、連絡がなかったため大丈夫だと考えたという。デザキ氏は、出演者には「試写会」という形で一般公開される前に全編を見てもらう機会を与えたとも強調した。

(文聖姫・編集部、2019年6月7日号)

 

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