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陸自配備進む宮古・石垣で「市議会クライシス」
市長の職権乱用に批判強まる
2019年6月24日1:32PM
沖縄県宮古島市で住民が「民主主義の崩壊」「言論弾圧」「市議会クライシス」などと強い危機感を示す“事件”が起きている。
発端は市議会(佐久本洋介議長)の3月定例会だ。一般質問最終日の27日、野党の上里樹市議(日本共産党)は自衛隊配備に伴う下地敏彦市長や市職員の対応を質問の中で批判した。同市では3月26日に陸自駐屯地が多くの問題を解消しないまま強行的に開設され、同4日には市内平良港で陸自の軍用車両陸揚げへの抗議に参加した市民を港湾課職員が警察を使い“排除”。自身も現場に駆け付けていた上里議員の「市役所は市民と丁寧に話し合うことも説明することもせず」「なぜ市民を罪人扱いして排除したのか」などの質問に、下地市長は「繰り返し説明した」「(罪人扱いは)一切していない」「職員の名誉のためにも発言の撤回と謝罪を求める」と反発した。
だが、4日の抗議に訪れた市民によると、当日は軍用車両が港湾から市内に入っていかないよう抗議をしていただけで「港湾業務の妨げとなる行動はしていない」のに、何の説明もないうちに警察が呼ばれたという。市民グループ「市議会の浄化をもとめる会」代表で医師の岸本邦弘氏は「警察を要請する場合の判断基準は一般的に犯罪性の有無でしょうから、市民が罪人扱いされたと感じるのはおかしなことではない」と話す。
問題は、そうした状況への問いかけだったにもかかわらず下地市長が議長の指名を受け答弁に立った建設部長を「待て」と制止し、その上、質問中に席を立って退場をほのめかしたことだ。市長は後日、「(席を立ったのは)パフォーマンス」など議会軽視の発言もしており、上里議員は「議会の議事整理権はいかなる場合にも議長にしかない。市長自らが議員に発言撤回・謝罪を要求するのは越権行為で、答弁せずに退場しようとするのは言語道断」と憤る。
だがこうした市長の行動を佐久本議長は注意せず、それどころか翌28日の議会冒頭、上里議員の発言を「不穏当」だとし、議長職権で発言の取り消しを命じた。さらにはそれを拒否する上里議員に対して与党議員12人が懲罰を求める動議を提出し、賛成多数で可決。4月23日には懲罰特別委員会(高吉幸光委員長)が上里議員に「陳謝」を科すことを決定した。同委員会は6月13日の定例市議会で上里議員に“読み上げさせる文案”も用意するとしている。上里議員がこれを拒否した場合は再度懲罰委員会が開かれることになる。
こうした対応のおかしさは、昨年12月に飲酒運転をして道路交通法違反で検挙された砂川辰夫議員の事例と比べても明らかだ。議会は検挙から3カ月も経た後、市民の陳情を受けて砂川氏への議員辞職勧告決議を可決したが、8人もの議員が反対。うち4人は上里議員の懲罰委員会に名を連ねているのだから論理矛盾も甚だしい。
【投票実施を何度も否決】
陸自配備計画が進む沖縄県石垣市議会クライシスも看過できない。
まず、陸自配備計画の予定地の是非をめぐる住民投票の実施が、実施基準を満たしているにもかかわらず議会で否決され続けている。「石垣市住民投票を求める会」は、昨年10月から11月の約1カ月で市の有権者数の約4割にあたる有効署名1万4263筆を集めたが、市議会は2月1日の臨時議会で住民投票条例案を否決。3月定例市議会では議員発議により住民投票等の特別委員会が設置されたが、同委員会は5月14日、与党の反対多数で再び同条例案を否決した。
市自治基本条例第28条は、4分の1以上の有権者が住民投票を請求した場合、市長は「所定の手続きを経て、住民投票を実施しなければならない」と定める。だが市側は同条例は理念としての条例で実際の運用は想定していなかったなどと釈明。中山義隆市政や市議会への市民の怒りは収まらない。
また、配備予定地の一部である平得大俣地区の民有地が長年にわたり違法開発がなされてきた、との疑惑についても、市民グループから市議会に質問が出されたが、市側は曖昧な回答に終始。民主主義の軽視が深刻だ。
(本誌取材班、2019年6月14日号)