仲村未央・沖縄県議会議員に聞く
戦災調査からはずされ続けた沖縄
2019年6月25日7:58PM
沖縄戦は終わっていない
――もし沖縄をきちんと調査して被害者に補償したら軍事費なんて飛ぶくらいの甚大な被害があるからやりたくないのでは。
私もそれが一義的な理由だと思っていて、なぜかというと戦後補償の中で一般人の補償はされてないんですね。軍人、軍属、準軍人が補償の対象です。だから多くの人が補償要求をあきらめているんです。沖縄の戦争被害を国が認めるのなら、全県民が補償の対象になるくらいの被害があった。だから補償要求が殺到することを恐れているのではと思います。
――それに、さっきおっしゃったような、軍隊が国民を守らないどころか加害者だったという実態を国が認めなければならないということもあるのではと思います。
それもあると思います。兵隊が赤ちゃんを殺したり、食料を強奪したり、壕から追い出したりということを証明しようとしたら、右翼のターゲットになってすごい非難をされるんですね。だけど沖縄県民も負けていない。県民大会で「史実をゆがめてはならない」「教科書の記述からこれを消してはならない」と11万人が集まった。
それだけ身近に自分の親や祖父母から話を聞いてきたからです。沖縄の人たちが辺野古の新基地建設に抗うのも、軍隊、軍備、国防というものが持ち込まれるとき、必ずそこに住む人たちや一番弱い人たちが犠牲になるという経験が受け継がれているから。「平和な世の中でありたい」「戦争を二度と起こしてはならない」という誓いみたいなものが根底にある。イデオロギーじゃないんです。
慰霊の日(6月23日)の式典には、どの総理大臣も慰霊の言葉を述べ、沖縄県民の気持ちに寄り添い、とか言いますよね。でも沖縄の人がどういうふうに死に追いやられたか、何人犠牲になったのか、国としてきちんと調査もしないで、何に寄り添うのか。
不誠実です。戦争を起こした国が責任を認めない限り、また戦争をするのではないかと疑ってしまう。責任をうやむやにしたら、国策によって人々を戦争に巻き込んであとは知らんふりという歴史が再び起きる。だから政府の総括がない限り沖縄戦は終わらないと思うんです。
――国会でも取り上げ、きちんと沖縄戦を終わらせたいとの思いもあって参院選に挑戦するんですか。
それもあります。このことは県民から大きな反響があり、今もあれどうなった? と聞かれます。私も一過性の質問で終わらせてはいけないと思って。国を動かすのは難しいですが、国に忘れさせてはいけない。他国への侵略や虐殺や「慰安婦」問題をなかったことにしようとする政権の姿勢を見るにつけ、きちんとした戦争の総括を、私たち国民が国に求めないといけないと思っています。
聞き手・まとめ・写真撮影/宮本有紀(編集部)
2019年6月14日号