東電株主代表訴訟、来年1月結審を提示
「実質単独審」懸念
小石勝朗|2019年6月27日10:18AM
東京電力の脱原発株主が勝俣恒久・元会長ら元幹部5人に対し、福島第一原子力発電所の事故で同社が被った損害22兆円を個人の財産で賠償するよう求めた株主代表訴訟で、東京地裁(江原健志裁判長)が来年1月に結審する日程を提示した。これに原告の脱原発株主が反発、5月30日の口頭弁論で撤回を求める事態になった。
原告弁護団によると、江原裁判長は5月24日に開いた非公開の進行協議で、9月に被告の元幹部や証人の尋問をして年内に結審する日程を示した。原告弁護団が反対すると、11月26~28日に尋問、来年1月23日結審に変更。原告弁護団もいったんは受け入れた。
しかし、その後、41人の原告の間で「3人の担当裁判官のうち裁判長は2月に交代したばかりで、左陪席は4月に着任したばかり。提訴から7年分の膨大な記録を短期間で読み込んできちんと合議をできるのか」と異論が出た。2年前から担当している右陪席の意見で判決が書かれ、実質的に「単独裁判」になるとの懸念が強まり、再検討を要請することにした。
進行協議で江原裁判長が「右陪席は来年3月末で異動になる」旨の発言をしたことが不信感を増幅させたという。原告の木村結・事務局長は記者会見で「これまで丁寧に審理してきたのに裁判所の都合で終わらせるのか」と批判した。
江原裁判長は30日の口頭弁論では尋問や結審の日取りを指定せず、「合議体として主張や証拠をしっかり検討して判断するのは言うまでもなく当然のこと。指摘や懸念に留意していく」と述べた。7月の次回進行協議で改めて方針を示すとみられている。
河合弘之・弁護団長は「以前に審理を早く進めるよう求めていたのを逆手に取られた。合議の実を上げるには、3人の裁判官が同じ土俵で議論することが不可欠だ」と指摘。尋問の前に裁判官を交えた勉強会を開催することなどを提案したいという。
(小石勝朗・ジャーナリスト、2019年6月14日号)