真実と事実と現実
小室等|2019年7月14日5:12PM
そういうわけで、われらと右翼のコラボを聴いたのは六万五〇〇〇人、という数は嘘。
つまり前の方に陣取った人たちには真実だけれど、後方に陣取った人たちにとってはなかった話、ということが判明。
さて、幼稚なたとえをひとつ。
後方に陣取った人たちが、僕の文章を読んで、「ありもしなかったことを言っている(事実その人たちにはなかった)」とみんなで証言、訴えたとしたら、僕には嘘つきというレッテルが貼られるだろう。真実と事実と現実はおぼつかないものだ。何かの犯人に仕立てるなど、力の側にいる者にとってはたやすい。
権力が出した結論には疑いの目を持たなきゃ、ね。
一九六七年に茨城県布川の強盗殺人事件で無期懲役が確定した櫻井昌司さんは二〇一一年に再審無罪、そしてつい先日東京地裁が、国と県に連帯で約七六〇〇万円を支払うよう命じた。
当然というより、少ない。櫻井さんの失った人生はそんな額で賄えるものではない。櫻井さんとともに冤罪を闘ってきた杉山卓男さんは、もういないのだ。
棚上げにされたままの、狭山事件の石川一雄さん、袴田事件の袴田巖さん、そのほかにも冤罪を闘う羽目に陥れられたみなさんの解放を願ってやまない。
検察の面子、司法の面子などで、いたずらに人の命と自由を弄ばないでほしいと心から思う。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2019年6月14日号)