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カードを切り間違えた安倍首相のイラン訪問

佐藤甲一|2019年7月15日5:27PM

6月12日、13日と続いた安倍晋三首相のイラン訪問は、まったくもって「無謀な賭け」であった。1年前の5月にトランプ米大統領が核兵器の開発をめぐる「核合意」から一方的に離脱したことは、米国・イラン両国に極度の緊張をもたらしてきた。特にイランからの原油輸入を禁止したことはイラン経済に打撃を与えたが、同時に日本にも少なからぬ影響が出ている。

今年5月からは日本も禁輸対象除外の適用がなくなったことで、ガソリンなどの高騰を招く結果になり、市民生活にも影響が及んでいる。ただ、ことは経済的な視点ばかりでなく、日本外交の「虎の子のカード」がイランとのパイプだったということだ。

トランプ政権に追随するのが安倍外交の基本方針とはいえ、特殊な「アドバンテージ」を持つイランとの友好関係は外交上持っておくべき「カード」でもある。もちろん、2017年の資源・エネルギー統計によると輸入における中東依存度は90%に及び、その中でイランは3番目の15%を占めているだけに、エネルギー安全保障上も日本としてはイランとの関係はできるだけ維持しなければならない。

よって日本が米国・イラン関係改善に一役買うことは国益にもかなうことであり、理解できる。だが、よりによってそのカードを切り間違えたのである。米国とイランの関係が悪化するなかで、安倍政権自慢の「シンゾー・ドナルド」関係を梃子に、諫めるべきはトランプ大統領に対してだった。それでこそ、イランとの関係は一層強まり、貴重なカードはさらに強化されるはずである。ところが切ったカードはイランを諫める、という真逆のものだった。

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