カードを切り間違えた安倍首相のイラン訪問
佐藤甲一|2019年7月15日5:27PM
5月25日から28日にかけて行なわれたトランプ大統領の訪日直前、安倍首相のイラン訪問が『読売新聞』によって「スクープ」された。つまり、この訪問はトランプ大統領の要請ではなく、訪日にあたってトランプ大統領に持ち掛けた安倍首相のカードだったわけだ。
だが、トランプ大統領は日本訪問を終えると、安倍首相を援護射撃するどころか、安倍首相がロウハニ・イラン大統領と会談した直後の12日にイラン系企業への制裁を発表している。安倍首相の外交努力を無にするかのような仕打ちと言えまいか。
その結果、最高指導者ハメネイ氏は13日、安倍首相の進言にもかかわらず、トランプ大統領との会談を拒否した。仲介は失敗したのだ。事前にイラン側が少しでも歩み寄るかどうかリサーチし、成算を持った上での訪問ではなく、行き当たりばったりの外交だったことが露見した。
さらには訪問中の13日に、ホルムズ海峡付近で日本のタンカーが攻撃されたことは、米国が主張するようにイランの仕業だとすれば、安倍首相のイラン訪問はまったくの茶番劇にすぎなかったことになる。
長年培ってきたイランとの大事なカードを、トランプ大統領におもねるがゆえにどぶに捨ててしまったかのようだ。名ばかりの安倍外交は、トランプ大統領に追随することで、国ばかりでなく官民間の努力で積み上げてきた「信頼」関係を失った。
トランプ政権はいずれ終わる。その時日本が無定見なトランプ外交にしっぽを振り続けた国家として、「世界の物笑い」になる日がくるかもしれない。
(さとう こういち・ジャーナリスト。2019年6月21日号)