ハンセン病訴訟で国に賠償命令
熊本地裁
高波淳|2019年7月19日7:07PM
ハンセン病患者への誤った隔離政策で家族も差別や偏見にあったとして、元患者の家族561人が国に損害賠償と謝罪を求めた「家族訴訟」の判決で6月28日、熊本地裁(遠藤浩太郎裁判長=佐藤道恵裁判長代読)は「違法な隔離政策で家族は差別を受ける地位に置かれ、家族関係の形成を阻害された」と、家族の被害を認め、国に総額3億7675万円の支払いを命じた。家族をめぐる賠償命令は初めてで、法相や文科相(文相)の過失にも踏み込んだ。
判決は「憲法が保障する人格権や夫婦婚姻生活の自由が侵害され、原告に共通する損害が発生した」とし、就学拒否や村八分などの差別被害を例示。原告541人に33万~143万円を支払うよう国に命じた。2002年以降に自分がハンセン病家族だと認識した原告など20人の請求は棄却。元患者本人たちが同地裁での裁判で01年に勝訴し、02年以降は「不十分ながら国などの人権啓発活動の効果が一定程度生じた」などと国の責任を認めなかったためだ。
遠藤裁判長らは、遅くとも1960年には隔離政策は必要なく、その時点で国が隔離政策をやめなかったことは違法だ、国会が96年までらい予防法を廃止しなかったことは立法不作為だとし「差別をなくすための啓発や教育をする義務があったのに怠った」と法相や文科相(文相)の責任も認定。原告の損害賠償請求権が時効で消滅したとの国の主張も退けた。判決文には01年の判決と同じ「人生被害」の言葉が記されていた。
原告側弁護団は「一部の原告の請求棄却は不当と評価せざるを得ないが、らい予防法廃止後も厚労相(厚相)、法相、文科相(文相)の家族への責任を認めた画期的な判決」と評価。国は判決を精査し各省庁と協議して対応する方針。昨年末の結審時、地裁は判決期日を5月31日と指定したが、その後6月28日に変更した。
(高波淳・記者 朝日新聞社社友、2019年7月5日号)