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映画『主戦場』のさまざまな戦線
阿部岳|2019年7月21日7:00AM
映画『主戦場』には、いろんな「戦線」がある。日本軍「慰安婦」を巡る論争の混迷を解きほぐす。主張の応酬を中心に据え、作品を成立させる。そして、メディアにとって中立とは何か、公平とは何かを問う。
衆議院議員の杉田水脈氏、米国人弁護士のケント・ギルバート氏ら保守派の論客が存分に自説を披露する。「強制連行なんてやりっこない」「性奴隷でなく売春婦」
研究者は真っ向から否定する。「インドネシアでは軍や警察に連れて行かれて慰安所に入れられたことが裁判で明白」「国際法的には自由な意志が剥奪されていると奴隷制ということになる」
スクリーンの中で、保守派は形勢が悪い。5月30日に「グロテスクなプロパガンダ映画」だと反撃の記者会見を開いた。さらに6月19日には上映中止と損害賠償を求めて東京地裁に提訴し、戦線は法廷にも拡大した。
主張はまず「学術目的で協力したのに商業映画に使われた」という点。これに対して、監督のミキ・デザキ氏と配給会社東風は、公開を前提に出演者がサインした承諾書を公開した。
保守派はさらに、発言を歪曲されたとも訴えている。この点もデザキ氏は否定し、「発言は彼らが日ごろ本や講演会で言っていることだ」と主張した。
たとえば提訴した保守派の1人、藤木俊一氏は劇中で「フェミニズムを始めたのは不細工な人たち。誰にも相手にされない。心も見た目も汚い」と発言した。5月30日の会見で真意を問われ、「言い続けてきていること。まったく改める必要はない」と明言している。